怖い"集団催眠"専業主婦年金3号はお得でズルイ Q&Aで考える「公的年金保険の過去と未来」(中)
東洋経済オンライン / 2024年3月28日 7時50分
そこで、1961年に概念上は社会保険とは似て非なる、定額払い・定額給付、つまり応益負担の国民年金(現在の1号)制度が始動した。
当時の年金局長は、「国民の強い要望が政治の断固たる決意を促し、われわれ役人のこざかしい思慮や分別を乗り越えて生まれた制度」と言っていたが、そのとおりだろう。普通に考えれば、技術的にできない。
『ちょっと気になる社会保障 V3』(195ページ)に書いているように、「野党や研究者から見れば攻めるにやさしい年金行政のアキレス腱が生まれる」ことになる。
しかも、産業構造の変化の中で被用者以外の人たちからなる当時の国民年金の被保険者は減少するのだから、持続可能性を持ちようがない。
そのため1985年に、それまでの国民年金の給付を基礎年金と呼び、同時に厚生年金の定額部分を2人分の基礎年金と読み替えて両者を一元化し、被用者とそれ以外の人たちの間で財政調整をすることとした。その時使われた理由はこうである──被用者年金の被保険者の親は農業者や自営業者の国民年金に入っていることも多いだろう。そうした国民年金を、被用者を含めた国民みんなで支えるのは当然ではないか。
ポイントは、第1号被保険者は、世界にもめずらしく国民皆年金保険を強引に目指したために生まれた、社会保険制度としては応益負担で運営されている、いびつな存在であるということだ。そして3号に言われる、いわゆる年収の「壁」があるのは、1号が存在するからでもある。しばしば、適用拡大は3号を減らすために行われるかのような論をみるが、1号を縮小するのが主眼である。
さらに、国民年金にしか加入していない第1号被保険者の運営原則と、厚生年金にも加入している被保険者2号、3号の運営原則はまったく違う。ゆえに、両者を比較することはできず、混乱を招くだけである。
──40年ほど前の1985年改正でできた年金制度を、どのように評価するか。
1985年年金改革の担当者たちは、労働省が男女雇用機会均等法の成立に努力しているのを意識しており、この法律ができれば、3号制度は利用されても一時的なものになるだろうと期待していた。ところが、あの時に生まれたのは「名ばかり均等法」で、多くの女性にとっては、働くよりも家にいるほうがましだと思えるような女性差別が根強く温存された労働市場のままであった。
しかし、その後均等法も改正され、他のワークライフバランスの諸施策も進められて、ようやく、社会や労働市場が、1985年頃に労働省に期待していた年金改革者たちの想定に近づいてきた。とはいえ、この間、3号が多く利用されたのは、さまざまな面で男女差が極めて大きい労働市場や家族政策の貧困に原因があった。
日本社会がようやく年金制度の想定に追いついた
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