1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

怖い"集団催眠"専業主婦年金3号はお得でズルイ Q&Aで考える「公的年金保険の過去と未来」(中)

東洋経済オンライン / 2024年3月28日 7時50分

社会が変わってきたのだから、古くからある年金を変えなければならないという話をよく目にする。ほんとうは逆で、ようやく社会が、以前からある日本の公的年金保険が想定していた社会に近づいてきたのである。

繰り返しになるが、日本の公的年金は、1985年の改革時に、片働き、共働き、単身などの世帯類型とは完全に独立になるように設計され、どの世帯類型であっても、「1人当たり賃金が同じであれば1人当たり保険料も給付額も同じ」という日本の公的年金の根本原則は貫かれている。だから、共働きや単身が増えたという社会変化の中で公的年金が変わらなければならない理由はないのである。

これまで長く信じられてきたように見受けられる「3号はお得な制度だ」という話は大きな誤解で、昔から、2号になることを家庭の事情が許すのであれば、2号を選択したほうが、年金は充実するようにできている。

「『専業主婦の年金3号はお得だ』って誰が言った?」でも話しているように、新しい世代で共働きが増えていくと、3号は活用されない「盲腸」のような存在になり、利用の仕方にもバリエーションがでてくればいい。仕事と家庭の両立支援や介護保険があまり充実しなかったら、子育てや介護期間中の人が利用することもあろうし、例えば、共働きの夫が新しいキャリアを目指し「僕はちょっとリカレント教育したい」と言ったら、妻は「わかった、じゃあ君の休職中は私の年金を君に半分あげればいいのね(夫が妻の3号になる)」、「ありがとう!君の時にも僕が協力するよ」という柔軟な活用方法もありうる。3号はそういった今後のライフスタイル多様性に見合ったバッファーのような使い方をすればいい。

私が座長をやっている東京都のくらし方会議で、女性の就業パターン別の生涯収入を試算してくれている。①継続就労型を選択すれば、女性がおよそ平均寿命まで生きた④出産退職型よりも、退職金を除いても生涯の世帯収入で約2億円、うち年金で約3000万円多くなる。終身給付が保障されている公的年金は長生きリスクへの保険であるため、もし長生きすれば、年金での差はさらに大きくなる。

東京くらし方会議は、妻が継続就業しない場合の配偶者手当、配偶者控除による夫の収入のメリットは、32年間で最大670万円程度との試算も行っている。

老後生活の安定のために重要な政策は、継続就労を選択することができる環境整備を一層進めることだ。いわゆる「年収の壁」の話は、就業パターン③パート再就職型、④出産退職型に限定し、収入について時間軸を無視して、生涯ではなく短期の「年収」に限るからおかしな話になるのである。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください