「肥満症薬バブル」でGAFAMを猛追する2つの銘柄 開発をリードする医薬品企業の評価が急上昇
東洋経済オンライン / 2024年3月29日 7時20分
マイクロソフト、アップル、エヌビディア――。生成AIブームが冷めやまぬ中、世界の株式市場ではアメリカのビッグテックや半導体銘柄が時価総額上位に君臨する。
【図表で見る】肥満症薬を発売したノボとイーライリリーの株価は急騰している
しかしこの1年で株価を2倍近くに伸ばし、これらトップ企業を猛追している医薬品メーカーがある。アメリカのメガファーマ、イーライリリー・アンド・カンパニーと、デンマークに本社を置くノボ・ノルディスクだ。
2024年に入り、2社が相次いでテスラの時価総額を抜いたことが大きく報道された。足元の時価総額は、イーライリリーが約110兆円で世界9位、ノボは約65兆円で14位につけている。
世界で肥満薬ブームを巻き起こす
ノボという社名は知らなくても、「ウゴービ」という同社が開発した製品の名前に聞き覚えがある読者は多いだろう。2月に国内でも発売された、肥満症の治療薬だ。この“肥満薬”への期待こそ、両社の株価急騰の起爆剤となっている。
ノボは、デンマークで1923年に設立された。糖尿病薬のインスリン製造を祖業とし、2023年12月期の売上高は2322億デンマーククローネ(約5兆円)に上る。医薬品メーカーでは、国内トップの武田薬品工業(前期売上高は約4兆円)を優に超える規模だ。
ノボの売上高は前期比で3割増、5年前と比べると倍近く伸びている。この数年で、一気にグローバル上位の医薬品メーカーに名を連ねることとなった。
急激な成長を牽引しているのは、「GLP-1受容体作動薬」。長期的に血糖値を下げるだけでなく、食欲を抑え、大きな体重減少効果を発揮する。ノボは従来展開してきたこのタイプの2型糖尿病薬「オゼンピック」を肥満症向けに開発し直し、「ウゴービ」と名付けた。
2021年にアメリカで肥満症薬としての販売が承認されると、需要に供給が追いつかず、偽造品が流通するほどの社会現象を巻き起こした。この成功と連動するかたちで投資家の買いが集まり、足元のノボの株価は2023年初と比べ9割近く上昇している。
肥満症薬ブームの火付け役ともいえるノボ。ところが、イーライリリーの株価はそれを上回る勢いで上昇し、2023年初と比べて2倍を超えている。こちらも同じく、GLP-1薬である2型糖尿病向けの「マンジャロ」と、肥満症向け「ゼプバウンド」の成長への期待が大きい。
マンジャロは、2022年6月にアメリカで発売されたばかりの新薬だ。その売り上げは、同年の4.8億ドルから、2023年には51.6億ドルにまで急成長。デビューからわずか1年で、同社でもっとも売れている製品である「トルリシティ」に次ぐ大黒柱となった。
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