「肥満症薬バブル」でGAFAMを猛追する2つの銘柄 開発をリードする医薬品企業の評価が急上昇
東洋経済オンライン / 2024年3月29日 7時20分
糖尿病薬自体は以前から存在したが、なぜここまで注目を集めているのか。
糖尿病は、血糖値の上昇を抑制するインスリンの働きが低下し、血糖値のコントロールが難しくなる病気だ。血糖値が高い状態が続くと、目の病気や脳卒中などにつながる可能性が高くなる。薬によって血糖値を下げることで、こうした合併症のリスクを下げられる。
GLP-1は食後に腸内から放出されるホルモンのことで、インスリンの分泌を増加させる働きを持つ。GLP-1薬は、このホルモンと同様の働きをする。
注射剤の場合、既存薬と比べて血糖値の低下をより長く持続させる効果があり、投与する回数を減らすことができる。それだけでなく、2017年にアメリカで発売されたオゼンピックが、2020年に心筋梗塞や脳卒中などの発症リスク低下の適応を得たことも大きい。多くの糖尿病患者が不安を持つ血管系リスクを抑えられることから、GLP-1薬への切り替えが急速に進んだ。
発売前から糖尿病患者以外の関心を呼ぶ
実はイーライリリーのマンジャロは、2022年にアメリカで発売される前から、糖尿病患者以外の肥満に悩む人たちの間でも大きな注目を集めていた。欧米人を対象にした臨床試験で、オゼンピックよりも高い体重減少効果を示したからだ。
イーライリリーは2023年末、マンジャロと同一成分で、肥満症患者向けに開発したゼプバウンドをアメリカで発売。欧米での臨床試験では、最大容量の15mgを1年間投与し続けた患者には、25%以上の体重減少の効果が示された。
これまで肥満症の治療は主に、即効性が乏しい食事・運動療法か、大きな効果がある一方で身体的・精神的負担も大きい胃の手術に限られてきた。第3の選択肢に対する需要は大きく、イーライリリーはマンジャロとゼプバウンドが2024年以降の成長を牽引すると予想している。
目下の課題は生産能力の増強だ。ノボは昨年11月、9000億円超もの巨額を投じて新たな工場を建設することを発表。増強は2029年にかけて段階的に行われ、GLP-1薬などの将来需要に応える姿勢だ。
一方のイーライリリーはアメリカでの生産能力拡大に投資をしているほか、ドイツにも約3700億円を投じて新たな製造拠点を建設する計画を発表している。工場が稼働する2027年以降はこうした生産能力拡大が寄与し、売り上げをさらに伸ばすとしている。
肥満症治療以外での開発も進む
GLP-1薬の開発で世界をリードする両社は、そのポテンシャルを糖尿病や肥満症以外の治療にも広げようとしている。
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