各話ごと振り返る「不適切にも」の凄いポイント 最終回はルールを壊して未来を変えられるか
東洋経済オンライン / 2024年3月29日 15時30分
第7話:回収しなきゃダメですか?
令和にきた純子は美容師のナオキ(岡田将生)とデートする。ナオキは現代っ子で、デートしたからといって純子のことをさほど深く考えていない。
ちょうど、エモケンの新作ドラマ制作に関わっていた市郎は、ドラマに例えてナオキに物申すが、「僕、ドラマって全部通して見たことないんですよね」「6話とか7話だけ見て、その回が好きなら、僕にとってそれは好きなドラマです」とあっさり交わされてしまった。
「テレビ局の自虐」も描いた
第8話:1回しくじったらダメですか?
『金妻』(金曜日の妻たちへ)ふうパティオのある栗田(山本耕史)の家で、たった一度のあやまちであった不倫をいつまでも糾弾し続ける地獄のホームパーティー、第1話でポスターが出てきた小泉今日子の登場、令和のムッチ(磯村勇斗)が彦麻呂と、SNS向けのネタのてんこ盛り。皮肉にも、番組を見ていないSNSユーザーの反応を気にして番組を作っているテレビ局の自虐が描かれていた。
第9話:分類しなきゃダメですか?
諸事情で渚とゆずるの家で暮らすことになった市郎。家族で純子の墓参りにいく。
生真面目な渚は、会社でも家でも煙たがられていた。ご近所さんの冷たい視線にさらされた渚を、ゆずるがミュージカルシーンで救う。たったひとりの身内・渚を守ろうと「切り取らないで」と、病身なのに切々と歌って踊るゆずるが面白いやら感動するやら。
こうして振り返ると、基本的には、昭和の終わりーー1980年代を過ごした脚本家・宮藤官九郎(1970年代生まれ)や、プロデューサー磯山晶(1960年代生まれ)というバブル時代も経験している世代感が色濃く出たドラマであり、彼らの過ごしてきた時代を振り返り、令和と並べて、いいことと悪いことを検証していく構成は、宮藤、磯山と同世代の視聴者、彼らのドラマで育った視聴者にドンズバだった。
ただ、彼らのドラマで育った視聴者というのは、サブカル愛好層、あるいはマイルドヤンキー層とほぼ限定されていて、決して幅広い層に受けているわけではない。社会学者・向坂サカエ(吉田羊)のようなタイプは眉を顰めていたことだろう。
まあ全方向に受ける作品など、なかなかないし、2000年代、2010年代において、テレビにこの層を引きつけた功労者であったのは紛れもない事実である。だからこそ、NHKの朝ドラや大河の脚本を任されたのだろう。
不安を感じる今だからこそ尊い青春
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