心理的安全性を説く100年前のアドラーの教え アドラー心理学で一番大事な考え方とは何か
東洋経済オンライン / 2024年3月30日 18時30分
先ほども述べたように、人間は、個体としては「弱い」「不完全」な生き物です。「弱い」「不完全」という意識、それが刺激となって思考や精神を発達させることで生き延びてきたのが人類です。
人間は、鳥のように翼がないから飛行機をつくり、魚のように泳げないから船をつくってきました。
そのため「弱い」「不完全」を補うために、常に、「目標」に向かって努力する行動習性が人間にはあると考えます。
「目標とする姿」と「現状」にギャップがあるからこそ、その目標に近づこうと努力するのです。
人は誰でも進化の可能性をもっている。
目標に向かって努力する。
アドラーは、そう考えたのです。
この「目標に向かって努力する」という習性は、人間の振る舞いや感情においてもそうです。
例えば、ある若手の部下が上司に反抗してばかりだとします。この場合、上司が原因だという人がいます。
しかしながら、同じ上司であっても、反抗する部下もいれば、しない部下もいます。ですので、上司に原因があるわけではありません。
反抗的になるのは、その若手の部下に「働きたくない」という目的があるから。
目的・目標が間違った方向、非建設的な方向にあるだけなのです。人間のどんな行動・感情にも目的・目標がある。
こう考えるのがアドラー心理学なのです。
また、怒りっぽい人で、こう発言する人がいたりします。「ついカッとなって怒ってしまった。あんなことを言うあいつが悪い」。
けれども、「カッとなって怒る」のは、相手が誰でもそうなるわけではないものです。
相手が女性や弱い人ならカッとなったとしても、上司や体の大きい相手ならどうでしょうか。「カッとなって怒る」ことはなかったりするものです。つまり、「怒る」のも相手しだいで、「目的」があるのです。
「怒る」ことの目的は、往々にして「相手を意のままに動かしたい」「相手を変えたい」などです。
人間の感情や行動には、「原因」があるのではなく、「目的」がある。アドラー心理学の基本といえる考え方に、こうしたものがあるのです。
100年たっても「新しい」
アドラー心理学は、100年たっても古びない、むしろ時代がますます追いついてきた感のあるものです。
アドラーは「横の関係」を大切にしていました。上下関係で人間関係をとらえることは、精神的な健全さを失うものと見ていたのです。この考えは、今の世の中にはとてもあった考え方なのではないかと思います。
人間に「役割の違い」はあっても、人間に「上下」はない。これは親と子、教師と生徒、カウンセラーとクライアントでも同じです。
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