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日本人の「賃金上昇に限界」がある超基本的な理由 日本全体で考えると「やるべきこと」はただ1つ

東洋経済オンライン / 2024年3月30日 11時40分

ポイントは、「全体」というところにある。みんなが高い商品を作れば、みんなが高い商品を買わされることになるからだ。

高い商品を作るか、クビにするか、どちらがいいのか。架空の村を作って思考実験をしてみると、答えは明白になる。

高級おにぎりを作る村

ここに10人で暮らしている村があるとする。シンプルに考えるために、住民はおにぎりだけ食べて暮らしているとする。この10人はおにぎり会社で働いている。自分たちで育てたお米を炊き上げておにぎりを作る。

1つ100円のおにぎりが毎日コンスタントに30個ずつ売れる。当然である。朝昼晩と10人が1つずつ買っているからだ。

1日の売り上げは3000円。働く10人でこれを分けると、1人当たりの賃金は300円。それぞれの村人は賃金として受け取った300円を支払うことで、毎日3個ずつのおにぎりを買って暮らしている。

おそらく江戸時代はこれに近い暮らしだっただろう。村の中でおにぎりが売られていたわけではないが、多くの人がお米を作るために働いているという点ではかなり近いはずだ。

さて、このおにぎり会社は客単価を上げて売り上げを増やそうと考え、高級おにぎりの研究開発に乗り出した。そして、米の栽培方法、米の炊き方、おにぎりの握り方にこだわって、1個200円の高級おにぎりの開発に成功する。

結果、1日の売り上げは3000円から6000円に倍増。給料も300円から600円に増える。

ところが、である。村人たちは生産者でもあり、消費者でもあるのだ。結果、おにぎり1個を買うのに200円支払う必要が出てくる。手に入れた600円の給料で200円のおにぎりを毎日3個食べる生活に変わるのだ。

これでは、賃金も2倍、物価も2倍になっているから、実質賃金は上がっていない(おにぎりは美味しくなっている)。実質賃金を上げるには別の研究開発をする必要があったのだ。

雇用を減らして雇用を生み出す

それは、品質ではなく、生産効率を高める研究開発である。少ない人数で米を栽培し、おにぎりを作る。5人で30個のおにぎりを作ることができたら、1日3000円の売り上げを5人で分けることになるから、賃金は300円から600円に上がる。

クビになった5人は、このままだとまずいと思い、新たな事業を始める。たとえば、ビール会社だ。

麦を栽培して、ビールを作る。1本300円。10人の村人が毎日1本ずつ買えば、売り上げはこちらも3000円で、1人あたりの賃金は600円になる。

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