日本人の「賃金上昇に限界」がある超基本的な理由 日本全体で考えると「やるべきこと」はただ1つ
東洋経済オンライン / 2024年3月30日 11時40分
ボスの皿のシフォンケーキは、そのまま残っていた。
そこに添えられたミントの葉を見つめる優斗に、疑問が芽生えた。次々に欲しいものや必要なものができれば、仕事は増えるだろう。だけど、と優斗は思う。
「新しい仕事が増えなかったら、やばくないですか?」
当然の心配だと思ったが、それこそがお金に囚われている証拠だとボスは言う。
「百人の国の話と同じやで。僕らが食べているのは、お金やない。パンが必要なんや。ロボットが活躍して仕事が減っても、生産されるパンは減るどころか増えるやろう。それなのに、生活できない人が増えるなら、パンを分かち合えていないってことや。せっかく仕事を減らせたのに、会社のえらい人や仕事のできる一部の人だけが得をしているという状態なんや」
「分かち合う…ですか」
それは、優斗が考えたことがない視点だった。
(『きみのお金は誰のため』94ページ)
経済成長の本質は、不要な仕事を減らし、新しい価値を創造することにある。
新NISAも始まって投資熱が高まっている。より多くの視線が企業の活動にフォーカスされれば、イノベーションが起こりやすくなる可能性はある。
それと同時に、社会全体にも視線を向けて、持続可能な成長や公平な富の分配についても考える必要がありそうだ。
田内 学:お金の向こう研究所代表・社会的金融教育家
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