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日本人の「賃金上昇に限界」がある超基本的な理由 日本全体で考えると「やるべきこと」はただ1つ

東洋経済オンライン / 2024年3月30日 11時40分

つまり、この村の住民は600円の給料で、おにぎり3個(1個100円)とビール1本(300円)を買えるようになった。

こうして、既存の産業の雇用を減らして、新しい産業の雇用を増やすことで、経済は進歩してきた。その結果、現代では、米やビールだけでなく、衣服、電化製品、教育など、さまざまな製品やサービスを手にすることができている。

実際に、100年前にくらべると賃金に対して支払う食費の割合は3分の1になっている。もしも雇用を減らす努力をしなければ、実質賃金は上がらず、新しい製品やサービスを手にすることはできなかった。

もちろん、雇用を減らすだけ減らしても失業者が増えるだけでは意味がない。雇用を生み出すという意味でも、ビール会社の例のようなイノベーションが必要になる。

しかし、近年の日本では真逆の努力がなされていた。「日本経済は成熟しているから新しい需要を生み出すことが難しい」と考えて、高機能高付加価値のものを作る努力をする企業が多かった。これは高級おにぎりを作る村と同じで、実質賃金は上がらない。

一方、隣村のアメリカではイノベーションが起きて、iPhoneやGoogleが作られ、実質賃金も上昇した。

そして、日本はアメリカから新しい製品やサービスを輸入するようになった。生活は便利になったが、使ったお金は外に流れていくので自分たちの賃金には反映されない。これもまた、実質賃金が下がっている理由でもある。

少子化が引き起こす賃金上昇

春闘で大きく賃上げが行われたが、これには少子化の影響もある。応募者が減っているため、給料を上げないと新入社員を採用できなくなっているそうだ。

先ほどの村の例とは異なり、実際の社会では10人の生活を5人くらいの働く世代が支えている。今後、少子化が進んで働く人の割合が4人に減れば、結果的に賃金をあげることは可能になる。3000円の売り上げを5人で分ければ1人600円だが、4人で分ければ750円になるからだ。

しかし、それを実現するためには、AIなども活用して少ない人数で社会を回せるようにならないといけない。

『きみのお金は誰のため』にも、こんな話を書いた。

お金が稼げなくなるのは困る。AIの活躍する未来に、優斗は不安を覚えた。

ところが、ボスの考えはまるっきり反対だった。

「経済は、ムダな仕事を減らしてきたから発展できたんや」

「どういうことですか?」と七海がたずねる。

「昔は、大勢が鍬や鋤を持って、田畑を耕しとった。トラクターなんかの機械ができたおかげで、仕事は激減した。そうして手のあいた人たちが、新しい仕事に取り組んで、新しい物を作るようになったんや。七海さんの腕時計や、このケーキがいい例やで」

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