1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

王者・アパホテルの「北米進出」戦略が超スゴかった 逆輸入と世界戦略を視野に、欧米でブランド確立へ

東洋経済オンライン / 2024年3月31日 12時0分

社長兼CEOの元谷一志氏はその反響について、「限られたスペースのなかで、小型化、高性能化したサービスを提供できることは、日本人の特性だと思っています。コーストホテルで日本の客室の良さを提言していきたいですね」と笑顔を浮かべる。

ちなみにゲストはアメリカ人、カナダ人が中心で、バスタブに湯をためて使う習慣はほぼないそうだ。だが、日本人も宿泊するため、「大は小を兼ねる」と設置しているという。また会員システムもアパの良いところを踏襲しつつ、現地仕様にカスタマイズして作っている。

大手の寡占化で見えた国内市場の限界

アパが北米に進出した狙いはどこにあるのだろうか。きっかけは、国内ビジネスホテルの寡占化が進み、拡大に限界が見えてきたことにある。

現在アパは11万7000室を保有し、全国のホテル、旅館の約8%を占めている。そして、2027年3月期には約10%、最終的には20%の寡占を目指して拡大中だ。けれど、独立系ホテルが減って大手チェーンによる寡占化が進む中、たとえ20%に到達したとしても、それ以上の成長は難しいと予測したのだ。

そこで目を向けたのが北米だった。他チェーンはアジアに展開している事例が多いなかで、北米を選んだのはブランディングの観点からだ。

「日本人には昔から、老舗企業へのリスペクトと西洋ブランドの憧れ、2つの性質があります。自分へのご褒美を買うときも、ルイ・ヴィトンのバッグやベンツなど、西洋ブランドを選ぶ人は多いですよね。だからコーストを欧米でしっかり根付かせることがブランディングになり、グループ全体のイメージの向上にもつながると考えたのです」(元谷氏)

将来的には、アパよりも客室単価の高いラグジュアリーブランドとしての逆輸入、さらには北米以外の海外への展開も考えている。トヨタのレクサスのような、ハイエンド向けのブランドを目指しているのだ。日本への逆輸入のタイミングはいつ頃かと尋ねると、「コーストホテルが北米No.1の客室数まで拡大したとき」と、毅然とした答えが返ってきた。

日本の人口減も、北米進出の背景だ

一方で、北米進出の背景には日本の人口減もある。2023年だけで、人口の減少は80万人を超えた。出生数が減り、死亡者総数が増えているからだ。そのため、ビジネスでも観光でも、宿泊ニーズは少しずつ減っている。これを補うのはインバウンドであり、そこをどれだけ取り込めるかが宿泊事業のカギになってくることは間違いないだろう。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください