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「アウストラロピテクスが最初の人類」は昔の話? 「人類のルーツ」の最新情報をアップデートする

東洋経済オンライン / 2024年3月31日 17時0分

最古の人類は700万年前!?(写真:SNOWBOOTS/PIXTA)

「えっ? 最初の人類はアウストラロピテクスじゃないの?」。あなたの教養は30年前の常識のままかもしれません。

2022年のノーベル医学生理学賞受賞で注目が集まっている進化人類学。急速に発展するこの分野の最新成果をまとめた『人類の起源』(中公新書)の著者、篠田謙一国立科学博物館長が監修を務め、同書のエッセンスを豊富なイラストで伝える『図解版 人類の起源』より、一部抜粋・編集してお届けします。

最初の人類はアフリカで生まれた

私たちサピエンス種が属する「ホモ属」は、一般に人類として括られるグループですが、ホモ属の誕生以前のはるか昔から、さまざまな化石人類が存在していました。

【イラストで見る】ラミダス猿人「アルディ」

DNA研究が推測する現代人とチンパンジーの分岐の年代は、およそ700万年前とされていますが、その時代の人類につながる化石がアフリカ大陸で見つかっています。2001年にチャドで発見されたサヘラントロプス属です。

さらにケニアで発見された600万年前のオロリン属、エチオピアで見つかった2種のアルディピテクス属を総称し、「初期猿人」と呼んでいますが、現在のところ、これら3つの属の系統的な関係はほとんどわかっていません。

次に人類進化のステージに登場するのが30年前の教科書にも載っていた「アウストラロピテクス属」。比較的早い段階でアフリカの広い地域に暮らしていたとされています。

3つの属の「初期猿人」

サヘラントロプス属をはじめとする初期猿人が、最初の人類と考えられる理由は骨格的な特徴にあります。人類の特徴である脳容積の増大に先立って「直立二足歩行」が完成しますが、それぞれの骨格の断片がその可能性を示しています。

最古の人類は700万年前!? サヘラントロプス属

2001年にチャドでほぼ完全な形の頭骨の化石、サヘラントロプス・チャデンシスが発見されました。

推定される身長や脳容積はチンパンジーと同程度。しかし、脊髄と脳がつながる大後頭孔(だいこうとうこう)の位置が前寄りにあることから、背骨の真上に頭骨が垂直にのる構造、すなわちヒトの特徴である直立二足歩行の可能性を示しました。

また、犬歯が臼歯(奥歯)より小さいこともヒトの特徴で、前年にケニアで発見された600万年前の人類オロリン・トゥゲネンシスの大腿骨の形状なども、直立していた可能性を示しています。

樹上と地上で生活か?アルディピテクス属

エチオピアで発見されたアルディピテクス属のカダッバとラミダスという2つの種。カダッバのほうが580万~520万年前と時代は古く、ラミダスは約440万年前に生きていたと考えられています。

数多く発掘されたラミダス化石の中で、「アルディ」と呼ばれる成人女性の化石は、全身骨格のかなりの部分が残っており、彼らの身体的な特徴が明らかになっています。

他の初期猿人と同様に直立二足歩行の可能性を示しているほか、腕が長く、足の親指が離れているという、地上だけでなく樹上生活者としての特徴も複雑に入り混じっています。

アルディピテクス・ラミダスの次に人類進化のステージに登場するのが、アウストラロピテクス属。このグループは、脳容積はゴリラやチンパンジーと同じくらいですが、二足歩行をしていました。最も新しい種は、初期ホモ属とも生存時期が重なっています。

二足歩行のアウストラロピテクス

アナメンシスの登場とその後を引き継ぐ「ルーシー」

最も古い時代420万~370万年前に存在したとされる種は、ケニアで発見されたアナメンシス種です。また、最も有名な「ルーシー」と呼ばれる全身骨格は、その後の370万~300万年前に存在したとされるアファレンシス種に含まれます。

アファレンシス種は、樹上生活をしていた頃の特徴(枝にぶら下がる能力が高い)が色濃く残り、性による体格差が大きいことなどもわかっています。

300万年前より新しい種としては、南アフリカ共和国で発見されたアフリカヌス種や、250万年前に存在したエチオピアのガルヒ種があります。

二足歩行の証拠は足裏の「土踏まず」にあり!?

アウストラロピテクス属の二足歩行が確実視される理由の1つとして考えられるのは、アファレンシス種の足裏に土踏まずの縦アーチがあることです。この足裏のアーチ構造が地面からの衝撃を和らげ、長距離の歩行でも疲れにくくするため、彼らが直立二足歩行に適応したと考えられています。

また、タンザニアのラエトリで、370万年前のものと思われるアファレンシス種の足跡も見つかっています。この足跡は、猿人の行動の直接的な記録であり、身体構造や歩行の様子を知る手がかりとなっています。

「猿人」である「アウストラロピテクス属」の次に人類進化のステージに登場するのがホモ・ハビリスなどの初期のホモ属です。しかし、最初のホモ属にどのように系統がつながっていくのかは、いまだ謎が多く残っています。

さらに時代を190万~150万年前まで進めると、「原人」と呼ばれる体型や大きさが私たちに近い化石が、アフリカや西アジア、中国やインドネシアのジャワ島などで発見されるようになります。それが「ホモ・エレクトス」と呼ばれる種です。

「北京原人」や「ジャワ原人」などもこのグループに含まれます。

エレクトス種は、化石の出土状況から約200万年前にアフリカで誕生し、ほどなくしてアフリカを出たことがわかっています。つまり、最初にアフリカを旅立った人類というわけです。

食用となる動植物を求めて移動するうちに、世界に拡散していったと考えられています。

200万年前に誕生した「原人」グループ

約200万年前にアフリカで誕生したホモ・エレクトス。食用の動植物などを求めて移動するうちにアフリカを出たとされ、ヨーロッパや中国、東南アジアなどに広く生息。北京原人やジャワ原人など、地域に適応した独自の進化を遂げました。

200万年前にアフリカで誕生

19世紀末にインドネシアでジャワ原人の化石が発見され、その最古の化石年代は約150万年前とされています。また、中国で発見された北京原人が生息していたのは、80万~25万年前。

地域ごとに骨格や顔つきが異なるなど独自の進化を遂げており、一部では別種と考える研究者もいますが、これらを総称してホモ・エレクトスと呼んでいます。

カラダは現代人のサイズ感に近い

ジャワ島などで発見されたホモ・エレクトスの化石から推定される成人の身長は、140~180cm、体重は41~55kg程度と、だいぶ現代人のサイズに近づいています。

脳容積には幅があって、550~1250mLと推定されています。ジャワ島の初期の種と、最後のものを比較すると、脳容積は約1.5倍に増えており、このことからもホモ・エレクトスは、地域の環境にそれぞれ適応しながら、系統の中で独自の進化を遂げていたことがわかります。

史上最初にアフリカを旅立った人類

人類は、誕生から長い間アフリカ大陸の中で生活していましたが、180万年以上前に人類初の出アフリカを成し遂げたとされるのがホモ・エレクトスです。

誕生から早い段階でたまたまアフリカを出たものが各地に広がり、生存期間が約190万年と長期にわたったとされています。

誕生から早い段階で世界に拡散

ホモ・エレクトスは、誕生から比較的早い段階でアフリカを出たものと考えられています。アフリカ以外で原人の最も古い化石が見つかっているのが、ジョージアにある「ドマニシ遺跡」です。

そこで発見された化石の年代は約180万年前のものと推定され、遅くともその頃には出アフリカがなされたことになります。

困難だった出アフリカを達成できたのは、当時のサハラ砂漠が現在のように発達しておらず、地理的な障害が少なかったことも理由の1つと考えられます。

ホモ・サピエンスより圧倒的に長く生存していた!

ユーラシア大陸の各地に広がっていったホモ・エレクトスは、各地域の環境に適応しながら独自の進化を遂げていきました。

1つの種としては、とても長く生存した種であり、ジャワ島では約10万年前のものとされる化石も発見されています。エレクトス種がアフリカで誕生したのが200万年ほど前ですから、約190万年も生存していたことになります。

ホモ・サピエンスの歴史は約30万年とされていますから、私たちより約6倍も長く地球上に存在していたことになります。

篠田 謙一:国立科学博物館長

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