日経平均が最高値を更新するための「2つの条件」 日銀は緩和的な政策を継続する可能性が高い
東洋経済オンライン / 2024年3月31日 8時30分
3月19日の日本銀行によるマイナス金利解除が、株価上昇を阻害することはなかった。一般論として「金利上昇→株価下落」という認識があるとはいえ、わずか0.1%ポイントの利上げでは誤差にすぎないということだろう。株式市場では、金利上昇に脆弱であるはずの不動産株やREIT(不動産投資信託)がむしろ買われるといった反応が見られた。
もっとも、日銀の金融政策決定会合を通過して、筆者は日本の政策金利見通しを上方修正することを検討している。以前から筆者は「マイナス金利解除をもって金融引き締め方向への政策修正を終了する」との予想を示してきたが、今や追加利上げが現実味を帯びていることは明白だ。その背景として最も衝撃的だったのは、金融政策決定会合の数日前に発表された、驚くほど強い春闘賃上げ率である。
「想定超の賃上げ」で日銀の金融政策はどうなるのか
ここで、あらためて春闘の数値を整理してみよう。メディアなどで取り上げられている賃上げ率(3月22日に連合が公表した2次集計値。1次集計値は3月15日に発表)は5.25%と、2023年春闘の3.58%をはるかに上回る数値であった。これはエコノミスト予想も大幅に超過しており、日銀にとっても驚きであったと推察される。
日本経済研究センターが集計したエコノミスト予想(2月調査、調査期間は1月30日~2月6日)によれば、春闘賃上げ率は3.88%、そのうち「定期昇給分」が1.66%、「ベア」(=ベースアップを縮めた言葉≒純粋な賃上げ率)相当部分が2.22%であったから、かなりの上振れである。
ここで1つ注意することは、この5.25%という数値には上記のように、定期昇給分とベアの双方が含まれているということだ。前者の定期昇給分は勤続年数などに応じて賃金が上昇する部分が含まれており、これは純粋な賃上げではない。では、それを除いた後者のベア(純粋な賃上げ率)ではどれくらいかというと、3.64%(賃上げ分が明確にわかる組合の集計)であった。
2023年春闘ではベアが2.1%程度であったことを踏まえると、2024年は飛躍的な伸びであり、多くのエコノミスト(おそらく日銀も)が夢のような数値であると認識していた、3%超の賃上げ率が示された形だ。仮に3.6%の賃上げが日本全体で実現した場合、日銀は今後、かなり高い確率で政策金利を連続的に引き上げる公算が大きい。
しかしながら、春闘賃上げ率はあくまで個別の労働組合と会社の賃金交渉であることをあらためて認識する必要がある。というのも、労働組合のない小さな企業や新興企業ではそもそも春闘がないため、春闘の結果が必ずしも日本全体の賃金動向を映じているとはいえない側面がある。換言すれば、春闘の結果は一部の業績が好調な大企業の賃上げによって全体の強さが誇張されている可能性があるということだ。
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