モスの「音楽レーベル」面白いけど厳しそうな理由 消費者のメリットは? バイト的にも魅力薄め?
東洋経済オンライン / 2024年4月2日 12時0分
実際、人材難ということは、より高待遇のバイトに多くの人が集まっているということでもあり、特にスポットバイトアプリの興隆によって、すでにアーティスト志望者の中ではバイトに困っていない人も多い。そんな状況の中で、この取り組みがどれほど成功するのか、難しいところである。
加えて、具体的な成果の測定が難しい点もある。この取り組みによって、求人への応募者がどの程度増えたのか、入職への動機にどう影響したのかは、定量的に測るのが難しい。継続性を考えるときには、その成果をデータとして捉え、活かしていく必要があるが、そのデータが取りづらいわけだ。
話題性だけが先行して、結局人材難の解消にはつながらなかった……となる可能性もある。ちなみに、私が話を聞いた人たちからは、「時給が高い、コスパのいいバイトだったら変えると思う」という声が多かった。単純に、賃金上昇をさせた方が、より直接的に人材増につながるのかもしれない(そう簡単に給料をアップできないから、今回のようなプロジェクトを打ち出したのかもしれないが……)。
③音楽とサービス業のタイアップは苦戦の歴史だった
最後に、これがもっとも重要なのだが、これまで、飲食チェーンが音楽とタイアップしてきた歴史を振り返ると、それは苦戦の歴史だったことが見えてくる。
そもそも、こうした音楽への訴求は、直接的に顧客にとっていいことがあるわけではない。ブランド力の強化には寄与しても、商品の味や価格を左右するものではないのだ。一時的な話題で終わり、その後の展開を誰も追わなくなるリスクは拭えない。いくつか具体例を挙げよう。
「モスレコーズ」と似た取り組みに、マクドナルドが行っていた「Voice of McDonald’s」がある。これは、全国のマクドナルドの従業員が出場することのできる歌のコンテストで、ソニーとのタイアップで行われていた。もともとは、アメリカのマクドナルドで行われていた大会だったが、2010年、2012年には日本でも開催された。優勝者は、CDデビューなども確約され、マクドナルド店舗を使った販促なども約束されていた。
しかし、特に日本においては継続的な取り組みにはならず、自然消滅のような形で収束してしまっている。
音楽事業から撤退したスタバ、成功した無印良品
また、今回の取り組みと少し角度は異なるが、スターバックスが店内BGMのレーベル「ヒア・ミュージック」を立ち上げ、撤退した例もある。
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