日本の在住外国人メディア、知ると驚く「深い世界」 日本の大企業も広告出稿「アルテルナチーバ」に迫る
東洋経済オンライン / 2024年4月3日 12時30分
「いまではうちの締め・支払い日に合わせてくれているし、そこは信頼関係があると思います」
と川上さんは言う。外国人を相手に商いをすることについて、とくに不安は感じていない。
さらにユタカは、ほかにもたくさんのエスニックメディアに広告を出してきた。タイ語、タガログ語、スペイン語……ウェブ版に移行したリ廃刊したものも多いが、それでもこれだけ多くの外国語の媒体が日本で発行されている。そして日本人から見れば、外国人社会というマーケットに直接アプローチできる窓口でもあるわけだ。
ユタカではエスニックメディアを通じて募集した人材を工場などの職場に斡旋するだけでなく、日本の習慣や日本語に不慣れな人であれば引っ越しの手伝いや買い物、病気のときの世話まで、生活のこまごまとした相談にも乗る。
「派遣業はよく『中間搾取じゃないか』なんて言われますが、派遣先の企業ではやらないケアまで含めて面倒をみるのも仕事なんです」
こうして外国人を相手にビジネスを続けるうちに、いつの間にやら社員もブラジル人、フィリピン人、ベトナム人と多国籍になってきた。いまでは社員の7割が外国人スタッフで、事業所によってはまるごと外国人に任せているところもある。みんな日本語がわかるとはいえ文化の違いから困ることはないのだろうか。
「うーん、そんなに感じたことはないですね。働きぶりも日本人と変わらないし、売り上げも伸ばしてくれるしね。それに、いろんな文化に触れられるから面白いじゃないですか」
田井さんが日本に来たのは19歳のとき
いまでは川上さんとすっかり盟友のような田井さんだが、ブラジルにいた10代のころから出版社で働いていたそうだ。
「はじめはアシスタントだったんですが、デザインの仕事を任されるようになって。自分がつくったものが印刷物になるのは嬉しかったですよね」
父とともに、ルーツの国である日本に来たのは19歳のとき。愛知県の刈谷市にある自動車関係の工場で働いた。いったんブラジルに帰国してから新聞を創刊したが、軌道に乗らなかったこともあり、2度目の来日。やはり工場で働きながらデザインの仕事も請け、パンフレットや名刺やロゴなどの製作を続けたが、どうしても自分の媒体をつくりたかった。それも、日本に暮らすブラジル人のためのメディアを立ち上げようと、29歳のときに「アルテルナチーバ」を創刊した。まず苦労したのは広告集めだ。
「信頼ゼロですからね。最初は難しかったですよ。でも僕、営業好きなんです。チャレンジが大好きなんですよ」
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