フォーミュラE「裏側から観た」東京大会の意気 チームはこの「東京E-Prix」をどう見たか?
東洋経済オンライン / 2024年4月5日 12時0分
コースは「抜けるポイントがほとんどない」(関係者)とされ、果たしてどうレースが展開するのだろうと、ますますレースへの興味をかきたてられたのだった。
一時的なパワーアップ「アタックモード」をどう使うか
東京での第5戦でポールポジションを獲得したのは、2018-19年シーズンから参戦している日産フォーミュラEチーム(ドライバー:オリバー・ローランド)だった。
マヒンドラ(同エドアルド・モルタラ)と、マセラティMSGレーシング(同マクシミリアン・ギュンター)が、残りのマシンを引っ張る形でレースはスタート。中盤になると、ローランドとギュンターがレースを大きくリード。後半は日産とマセラティの一騎打ちの様相となった。
フォーミュラEがおもしろいのは、「アタックモード」。特定のコーナーの外側にレーン(アクティベーションゾーン)が設けてあり、そこを通るとパワーアップ(300kWから350kWへ)ができるというものだ。アクティベーションゾーンを通過すると、2分と6分、あるいは4分ずつ、計8分のアタックモードが使えるようになる。
ポイントは2つあり、ひとつはアクティベーションゾーンが“理想的なコーナリングラインの外側”にあること。パワーはもらえるが、そのときはタイムが落ちる。もうひとつは、レース中に2回、ここを通過することが義務づけられていることだ。
つまり、いつアクティベーションゾーンを通過し、またどのタイミングでアタックモードを使用するかが勝敗に大きく影響する。
日産のローランドは、マセラティのギュンターのスリップストリームに入ったあと、アタックモードでパワーアップを図ったが、それでもギュンターに追いつけず、これも見せ場に。そのままトップがギュンター、コンマ3秒遅れてローランドという状態が続いた。
ストレートでローランドは何度かギュンターを抜こうとし、そのたびに私たちは「おおっ!」と声をあげたものの、「今季はまだ効率とエネルギー密度でトップチームに追いつけていない」という日産フォーミュラEチームの西川直志チーフパワートレインエンジニアが私に語ってくれたとおりなのか、どうしても抜くことができない。
途中の事故でイエローフラッグが出たため、2周追加されて35周となった東京での第5戦は、マセラティMSGレーシングが今季、初優勝を飾った。
「2028年に量産車ラインナップのフル電動化をめざす私たちにとって、フォーミュラEでの勝利は将来につながるもの」と、レース直前にマセラティ・コルセ統括責任者であるジョバンニ・トンマーゾ・スグロ氏が語ってくれたが、まさにその願いがかなった形となったのだ。
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