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地方創生「東京から遠い=ダメ」は言い訳・誤解だ 「新幹線なし、空港から1時間以上」本当にNG!?

東洋経済オンライン / 2024年4月5日 10時30分

企業誘致を行う際に考えたい「5つの距離」とは?(写真:EKAKI/PIXTA)

「今の日本で最大の課題とされる『地方創生』にこそ日本の未来はかかっている」

2022年度の「地方創生テレワークアワード(地方創生担当大臣賞)」と「テレワーク先駆者百選 総務大臣賞」をダブル受賞した株式会社イマクリエ代表の鈴木信吾氏はそう語る。

地方創生をビジネスの使命として全国を駆け回り、約1万人の関係者と接した鈴木氏が、その経験をフルに生かして、このたび『日本一わかりやすい地方創生の教科書 ――全く新しい45の新手法&新常識』を上梓した。

各自治体からは、その地域ならではの「地に足のついた提案」で好評を博している鈴木氏から見た「地方創生『東京から遠いからダメ』は大間違いだ」について解説する。

「都心に近いほうが有利」は必須条件ではない

「うちの町は東京から遠いから発展する芽がない。新幹線が停まらないから人が集まらない。仕事がないから若者が離れてしまう」

【1位東京、2位京都、では3位は?】外国人に聞いた「日本で行きたいところはどこですか?」意外すぎる答え

これまで地方の欠点として言われていたこれらの理由は、「地方創生3.0」の時代には単なる「言い訳」になりつつあります。

たとえば「地方創生3.0」の時代の「企業誘致」は、かつてのような大工場誘致ありきではなくなっています。

地方への移住も「転職なき移住」が当たり前となりました。

新幹線が停まると、逆にストロー現象で地元の人が出て行ってしまう」ということがわかったいま、「リモートワークに新幹線はいらない」と、市民へのリモートワーク講座を実施する自治体も増えています。

そんな時代にあって、「地方進出」を考える企業にしたら、「都心から近ければ何でもいいか」というと、それだけが条件ではありません。

じつは「企業誘致」を考えるときに「5つの距離」も考えます。

1つめは、「都心から何キロ離れているか?」という絶対値になる「絶対距離」です。

「絶対距離」より「時間距離」が重視される

【1】「絶対距離」

一般的には「都心からの『絶対距離』が短いほど近い」と思われがちですが、「各種交通手段」のありようによって、「時間距離」は変わります。

たとえば、東京から軽井沢までの「絶対距離」は約120キロですが、新幹線があるので時間距離は約1時間です。

ところが、東京から秩父までの「絶対距離」は約90キロなのに、「時間距離」は約2時間かかります。

企業にとっては、どちらの距離でその自治体を見るかというと、「絶対距離」よりも「時間距離」と答える企業が多いのではないかと思います。

【2】「時間距離」

前項でも少し触れたように、すべての交通手段を考えて、都心からその自治体までかかる時間が「時間距離」です。

「自治体までかかる時間」だけでなく、ここでは「乗り換え」「飛行機や列車の1日の便(本)数」も問題となります。

すべてを含めて、自治体と都心がどれくらいの「時間」で結ばれているのか、それを計ってみてください。

仮に都心からの「絶対距離」は遠くても、「飛行場がある」「新幹線の駅がある」「インターチェンジが近い」などの条件があれば、「時間距離」という点からは「近い」と判断されるエリアもあります。

3つめは「コスト距離」です。これは工場の新設や、そこで働く社員の新しい環境などにかかる「コストから見た距離」のことです。

社員の「働く環境」「生活環境」を考えて決める場合も

【3】「コスト距離」

たとえば、「地方にオフィスや工場を新設したい」と考える企業ならば、それだけの土地が空いているエリアでないといけません。

不動産コストを考えると、都心からなるべく遠いほうが低コストで理想の物件が手に入りやすい可能性が高くなります。

また、そこで働く社員の「居住環境」や「生活環境」を考えた場合、「生活コストの低い、都心から離れている自治体」を選んだほうが社員にとってメリットがある場合もあります。

【4】「環境距離」

企業の進出の目的によっては、「そのエリアの『環境』がもっとも大切だ」ということもあります。これが「環境距離」です。

たとえば、「静かな環境で研究者にじっくりと研究活動をしてほしい」という企業ならば、「自然環境」や「生活環境」を重視したところに研究所をつくるというケースです。

このときは「時間距離」や「絶対距離」は遠くなってもいいということになります。

最後は、「5つの距離」の中で、もっとも重要な「情熱距離」です。

【5】「情熱距離」

「『地方創生』を成功させたい」という企業誘致への「熱意」が「情熱距離」ですが、これは自治体によって異なります。

たとえば、首長が誘致に熱心でも、現場の担当者にそれが伝わっていないケースがあります。逆に、首長や役場の幹部よりも、現場の担当者の熱意がものすごいケースもあります。

また、都心から車でも電車でも1時間圏内の「時間距離と絶対距離が近い自治体」は、あまり熱心ではありません。

わざわざ「地方創生」のアクションを起こさなくても、地方から上京した若者が住み着いたり、郊外型のアウトレットモールができたりして、人が集まってくるからです。

都心から電車でも車でも3時間から4時間かかったり、空港に降りてからも1時間以上かかったりするような地方の自治体のほうが、自治体の存続についての危機感もあり、「地方創生」への「熱意」があります。

「情熱距離」が近いとチャンスが広がる

地方進出を考える企業からすると、「情熱距離」という観点は、地方の自治体のほうが進出を検討するに値するケースが多々あります。

どうしても「東京に近い」という「絶対距離」「時間距離」が近いほうが、とても有利に感じられがちですが、東京からのアクセス条件が悪くても、チャンスはあるのです。

私たちの経験からすると、岩手県の沿岸部最北端の洋野町、長野県の北部の飯綱町、能登半島地震の被災地でもある石川県羽咋市などが「情熱距離」の評価の高い自治体です。

「絶対距離」「時間距離」よりも、担当者の「情熱」と自治体の「本気度」がある 「情熱距離」で成功するケースもあるのです。

全国の自治体のみなさん、この「5つの距離」をうまく活用し、企業には情熱距離をアピールして「地方創生」の成功へつなげていってください。

鈴木 信吾:『日本一わかりやすい地方創生の教科書』著者・「テレワーク先駆者百選 総務大臣賞」受賞

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