1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

「一流の料理人」の条件は?「伝説の農家」語る裏側 「食べる苔」「蟻のトッピング」…一体何が違う?

東洋経済オンライン / 2024年4月6日 13時0分

野菜も、野草も、山菜も、食材として同列にとらえ、最適かつ自由な発想で庄内のテロワールを表現する。その考え方の基本に、浅野の影響があるという。

2002年、飲食店向けに年間100種類以上の野菜を出荷する浅野の畑に初めて行った日のことを、奥田氏は楽しそうに振り返る。

「いきなり『食べてみろ』って浅野さんに渡されたのが、パセリの根っこです。でもあれ、おいしいんですよ。朝鮮人参みたいな味がする。いろんな色・形をした野菜があるだけでなく、食べられないと思っていた部分も料理に使えるんだとわかりました」

「異端者」が「食の都」を創り上げた

奥田氏は当時から、庄内の在来種の野菜や野草、山菜などを積極的に料理に取り入れていたが、業界では異端視されていた。イタリアンならイタリアの食材を使うのが当たり前とされていた時代だからだ。

時折弱気な様子を見せる奥田氏に、浅野はこんな言葉をかけたという。

「山形は食材の宝庫じゃないか。一歩外に出たらいくらでも食材がある環境が、みんな羨ましいだけだよ」

何度も畑に通ううち、自分がしていることは間違っていないと確信した奥田氏は、「庄内を食の都にします」と地元で宣言。生産者と密な関係を築くことで、その料理はさらに自由度と創造性を増していく。

「藤沢かぶ」「平田赤ねぎ」「外内島きゅうり」「月山筍」「民田なす」といった在来作物を積極的に取り入れ、消滅寸前の作物の保存・継承にも取り組んだ。「食の都庄内親善大使」として庄内の食文化の発信に貢献した結果、2014年、鶴岡市はユネスコの「創造都市ネットワーク」食文化部門の加盟認定を受けている。

信念を貫き、誰にも真似できないものを創り上げることのできるシェフには共通点があると浅野は言う。

「みんな、子どもみたいな好奇心と探求心を持っていることだね。未知の食材に、自分から飛びつく。使ったことのないものを使いたがる。『noma』のレネ・レゼピシェフもそうだったな」

浅野の畑には、食材の提供だけでなく、「新しい発見」を求めてやってくるシェフもいる。

「世界一予約が取れないレストラン」と言われる「noma」(コペンハーゲン)のレネ・レゼピシェフもその一人だ。

「食べる苔」「蟻のトッピング」の衝撃

2015年、「noma」が東京でポップアップレストランを展開した際にレゼピ氏は浅野の農場に姿を現した。

日本中を回り、日本人も知らないような食文化まで深く掘り下げていたレゼピ氏は、畑を一緒に歩きながら、浅野にヒントを求めてきた。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください