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韓国総選挙「タマネギ男」政党の人気がなぜ高いのか 「法難」訴え曺国元法相の新政党が選挙戦の目玉に

東洋経済オンライン / 2024年4月7日 17時0分

曺国氏が元法相だったからではなく、「法難」という言葉は「仏法を広げる際に権力者から受ける迫害」を指す。彼は「検察改革を推進しようとしてその検察という巨大権力から迫害を受けた」と自らを定義し、それを熱狂的なほどに信じる人たちが急増しているのだ。そうした高揚感が醸成された状況において、「検察独裁」というフレームは実に響くようだ。

韓国政治の内情に詳しいソウルの知人たちに話を聴くと、みな一様に「確かに大統領は検事出身だが、政権全体が元検事だらけというわけではない」と述べ、「検察独裁」は誇大だと眉をひそめる。

だが、「法難」は仏法を信じる者たちを弱めるのではなく、むしろ結束を強める場合が多い。そうした心理的なメカニズムが、「祖国革新党」ブームの本質のように思える。それは、アメリカでトランプ前大統領がさまざまな罪で起訴されればされるほど支持者たちの結束が高まる現象に通じるものがある。

一方、留意すべき点もある。年代によって支持・不支持が極端に分かれていることだ。私が覗いた仁川でのイベントでもそうだったが、「祖国革新党」支持者のほとんどは40代以上、とりわけ50代が多い。検察と闘う曺国氏の姿に、かつて学生運動を通じて軍事政権と闘った自分たちの青春を投影しているようだ。

しかし、30代以下での支持率は一桁に留まり、とりわけ20代は「ゼロ」という調査結果も出ている。権力者の親の力で娘が大学に不正入学したというスキャンダルを、苛烈とされる韓国の受験・就職競争に直面、あるいは経験が新しい若い世代が許すことはなさそうだ。

最大野党代表も「法難」を訴え

この「法難」に自らを重ねていそうな総選挙の主役級がもう1人いる。「共に民主党」の李在明代表だ。

彼は城南市長時代の都市開発事業をめぐる不正をはじめ、収賄や横領など複数の罪で起訴されている「不正の総合商社」だ。2024年4月2日にも公判が開かれたため、彼は選挙遊説を中断して法廷に立たざるをえなかった。

このあとも公判が予定されていて、13日間の公式選挙運動期間中、実に3日間も裁判所に出向かなければならないのだ。選挙運動期間における最後の公判は4月9日。投票の前日まで裁判所通いを強いられる。

さすがに日本では考えられない展開だが、一貫して無罪を主張する李在明氏は、こうした状況を「法難」よろしく自身に有利な方向に世論を誘導しようと余念がない。

4月2日、法廷に入る前に「貴重なときなのに選挙に集中できない状況なのは残念だ。これも『検察独裁政権』のもとで捜査・起訴の権利を濫用する『政治検察』が望んだ結果ではないか」と記者団に述べた。権力から選挙運動妨害という迫害を受けている、というわけだ。

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