新型やくも、JR西が仕掛けたもう1つのサプライズ 沿線の駅に新たなラウンジ、デザインの秘密
東洋経済オンライン / 2024年4月8日 6時30分
「乗り物酔いしにくい」新型車
岡山―出雲市間を結ぶ特急やくもに導入する新型車両「273系」が4月6日に営業運転を開始した。
【写真を見る】JR西日本が新型「やくも」のデビューに合わせて仕掛けた“もう1つのサプライズ”とは?
最大の特徴は最新型の振り子式の制振装置を導入したことだ。岡山―出雲市間はカーブが多いため、従来の「381系」はカーブ区間に来たら自然に車体が傾くことで速度向上を可能とする「自然振り子式」が採用されていた。しかし、この方式は、カーブに差し掛かり遠心力が働き始めたタイミングで車体を傾斜させるため、乗り物酔いしやすいとされる。
そこで、JR西日本は「制御付き自然振り子方式」を開発して273系に搭載した。走行データとマップデータを照合し、正確な現在位置情報をもとに、カーブに差し掛かる前から新型装置が作動し車体を傾斜させることで、より自然な乗り心地を目指した。「乗り物酔いしにくい車両になっている」と、JR西日本の担当者が胸を張る。
営業運転開始前の3月23日、報道関係者向けの試乗会が開催された。実際に乗車してみると、381系に比べて確かに乗り心地がよい。381系ではカーブ区間では通路を立って歩けないほど揺れていたし、座っていても細かい振動が気になった。しかし、273系は座っていても立っていても揺れが少ないと感じる。たとえて言えば新幹線のような乗り心地だ。
客室内のデザインも381系と273系ではまったく違う。やや暗い色彩の381系に対し、273系の普通車シートは緑と青を基調としており、明るく開放感がある。2人用と4人用のボックス席からなるセミコンパート席は座面をスライドさせるとフラットシートになるので、足を伸ばしたり、小さな子供を遊ばせたりすることができる。まるで観光列車のようだ。こうした非日常感も心理的な快適性向上に一役買っているのだろう。
273系のデザインを手がけたのは建築家の川西康之氏。JR西日本では「WEST EXPRESS(ウエストエクスプレス)銀河」などのデザインで実績がある。「381系では寝ている乗客が多かった。273系では乗客が目を見開き、車内を歩き回るようにしたい」と意気込む。
駅に「やくもラウンジ」設置の狙い
新型やくもの運行開始に合わせ、JR西日本はもう1つの仕掛けを行った。米子駅と出雲市駅に「やくもラウンジ」という待合室を設置したのだ。
米子駅は2023年7月にリニューアルされ、新駅舎と駅ビルが開業した。やくもラウンジは新駅舎の2階にある。室内には地元山陰の木材を使用した椅子、テーブル、インテリアが設置されている。これらの木材は米子駅の駅舎でも要所要所に用いられており、たとえば駅の南北を結ぶ自由通路の中央に置かれたベンチ、トイレ前のモニュメントなどにも使われている。
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