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国民保守主義も「意識高い系」も自由を滅ぼす 表面的には対立する理念が実は通じ合う逆説

東洋経済オンライン / 2024年4月9日 13時0分

多元主義を嫌い、国家主権を個人より尊重するのですから、国民保守主義は必然的に「社会の多数派の意向」(より正確には、国民保守主義者が「多数派の意向」と見なすもの)に合わせた権威主義をめざす。

けれども中野剛志さんたちとの共著『新自由主義と脱成長をもうやめる』(東洋経済新報社、2024年)で指摘したとおり、自由民主主義が機能する条件は、さまざまな中間団体を通じて多元的な利害調整が行われること。

つまり国民保守主義は、自由民主主義を否定する性格を持ちます。

しかも少数派に属する人々の意向は抑圧して構わないとくるのですから、ナショナリズムを志向しようと、実際には国民統合を解体しかねない。

看板に偽りありと言うか、自滅的と言うか。

「国家保守主義」としたほうが適切かもしれませんが、何にせよ、これで経世済民が達成できるとは信じられません。

ならば国民保守主義が反発してやまない「意識高い系」は、自由を守り、経世済民に貢献する理念なのか?

それが違うのです。

とくに曲者なのが「意識高い系資本主義」。

次はこの点を見ることにしましょう。

正しさに酔ったあげくの独善

そもそも「意識高い系」とは何か?

これを理解するうえで役立つのが、組織論の専門家カール・ローズの著書『WOKE CAPITALISM 「意識高い系」資本主義が民主主義を滅ぼす』(東洋経済新報社、2023年)です。

「意識高い系」の原語「woke」は、目覚めているという意味。

「進んだ考えを持っていること」、ないし「社会的な問題の存在について自覚的であること」を指します。

もともとはアメリカの黒人の間で使われた一種の隠語でしたが、1960年代、変革の気運が社会的に高まるのと前後して、より広範な層に浸透してゆく。

今や人種問題はもとより、同性婚、ジェンダーの平等、経済格差、気候変動、動物の権利といったさまざまな事柄について、進歩的、つまりリベラルな考えを持つことが「woke」と呼ばれるようになりました。

ただし同時に、言葉のニュアンスも変わってくる。

「広い視野を持ち、しっかりと物事を考える」という肯定的なものから、「偽善的なキレイゴトをしたり顔で並べ立てる」という否定的なものへと移行していったのです。

日本語の「意識高い系」など、2010年代に使われ出したこともあって、はじめから「本当には意識が高いわけではない」という揶揄の意味合いを帯びていました。

これもまた無理からぬことでしょう。

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