国民保守主義も「意識高い系」も自由を滅ぼす 表面的には対立する理念が実は通じ合う逆説
東洋経済オンライン / 2024年4月9日 13時0分
「意識高い系」が掲げる問題意識は、少なくともタテマエとしては否定しづらいものばかり。
裏を返せば、自分の正しさに酔いやすくなる。
「オレたちの高邁な理想に賛同しないヤツはバカ」という独善に陥るのです。
口でこそ「多文化共生」を唱えたがるものの、実際には意見の違う者を認めるつもりがなかったりするんですな。
ところが近年では、民間企業、なかんずく多国籍企業が、社会問題について「意識高い系」の姿勢をアピールする傾向が強い。
これがつまり「意識高い系資本主義」ながら、当該の傾向、昔ながらの「企業の社会的責任」論とは異なります。
富豪たちは「世界の少数支配」をめざす
「企業の社会的責任」論が前提としたのは大きな政府。
必要に応じて、企業活動にも制約を加えかねない存在です。
経済のグローバル化はさほど進んでおらず、「世界には国家レベルでは解決できない問題が山積している」という発想も顕著ではなかった。
ゆえに企業は活動を規制されないためにも、営利追求一辺倒ではなく、公共の福祉や、文化などの分野に利益を還元することで、政府による経世済民の達成を手助けすべきだというのが「社会的責任」論。
ひきかえ、「意識高い系資本主義」が前提とするのは小さな政府。
企業活動を規制するどころか、多国籍企業に迎合しかねない存在です。
経済はすっかりグローバル化、国家レベルでは解決できない問題が多々あるのも常識。
だから企業が政府に代わって、意識高く進歩的な姿勢を取ることにより、経世済民の担い手にならねばならない!
こういう発想なのですよ。
投資運用会社ブラックロックのCEOで、大富豪でもあるラリー・フィンクなど、2019年、投資先各社のCEOにこう呼びかけました。
「根本的な経済の変化と、永続的解決策を提供できない政府の失敗によって社会は動揺しており、官民を問わず、企業が差し迫った社会的・経済的課題に取り組むことを、社会は一層期待するようになっています。(中略)世界はあなた方のリーダーシップを必要としています」(『WOKE CAPITALISM』134ページ)
莫大な富を持つ自分たちが率先して、世の中を「良い方向」に導こうという次第。
これの行き着く先は、富豪による(実質的な)世界政府の構築です。
大企業は多国籍化して久しいんですから。
けれどもカール・ローズが指摘するとおり、ここで言う「良い方向」とは「富豪層にとって都合の良い方向」のこと。
しかも「意識高い系」なので、自分たちの高邁な使命感に賛同しないヤツはバカということになる。
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