倒産急増「日本のパン屋」が抱える特殊な問題 消費者にとっては嬉しいが、店にとっては負担
東洋経済オンライン / 2024年4月9日 11時30分
日本にパン好きは多いが、町のパン屋は危機を迎えている――。東京商工リサーチによると、2023年度、町のパン屋の倒産は過去最多の37件に上った。実は2019年度にも、倒産件数がそのとき過去最多の31件(帝国データバンク調べ)となり、話題になっていた。
【グラフで見る】2023年度のパン屋さん倒産は37件と前年度から急増
パンデミックという特殊事態が起こり、各種新型コロナ関連支援や、外食の制限でテイクアウト需要が伸びたことなどで延命できたパン屋も、もとの日常が戻るにつれ、抱えていた課題が顕在化し、耐えきれなくなったのではないだろうか? 何が問題なのか、改めて考えてみると、日本のパン屋が抱える特殊な問題が見えてきた。
薄利多売のうえ、手間がかかる
倒産が増える要因としてよく指摘されるのは、物価高やロシア-ウクライナ戦争による小麦価格の高騰、原油高、人手不足や人件費の上昇といったコスト高だ。
パン屋はもともと、薄利多売の商売である。私はこれまで大手メーカーを含めてパン屋の取材を10年近く続けてきたが、よく聞くのは、「儲けようと思ってこの商売を始めても続かない」という言葉だ。
大量生産が前提のメーカーですら、手作業の要素を残す場合があるなど、製造に手がかかるほか、発酵食品ゆえの手間もある。もちろん、冷蔵庫で長時間発酵させるなど、労働時間を短縮する努力を進めてきた個人店も多いが、基本的に煩雑で体力が必要な仕事であることは変わらない。
そのうえ、近年は、インストアベーカリーを始めるスーパーが増え、焼き立てパンを売りにするなど、ライバルが増えている。
加えてパンはロス率が高い食品でもある。近年は、古くなったがまだ食べられるパンを扱うビジネスも増えたが、全体から見ればごくわずか。前述の各種要因のほか、実はこのロス率の高さに、倒産が増える要因があると私はにらんでいる。そしてもう1つ、考えられる別の理由がある。この2点について、掘り下げたい。
食事パンより菓子パン・総菜パンが人気
ロス率が高くなる背景に、日本特有の事情がある。パンを中心的食糧にしてきたヨーロッパでは、古くなったパンの再利用方法が発達している。フレンチトーストやパン粉、クルトン、ラスクのほか、日本ではあまり見かけないが、国によって「クネル」「クネーデル」などと呼ばれる団子に加工し、食べる料理もある。それができるのは、再利用されるパンがシンプルな食事パンだからである。
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