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「株は5月に売却せよ」が日本株に当てはまらぬ訳 米大統領選挙でパフォーマンス爆上がり?

東洋経済オンライン / 2024年4月11日 8時30分

相場で囁かれ続けているアノマリーについて、実際当てはまっているのか、実際株価はどのような動きを見せているのか、検証しながら解説します(写真:Graphs/PIXTA)

新NISAが始まったことで、高まっている投資機運。しっかり儲けている人は、どんな考え方で投資してきたのでしょうか?

2023年10月時点で、1億4300万円の資産を保有する兼業投資家・なのなのさんの書籍『月41万円の“不労所得”をもらう億リーマンが教える 「爆配当」株投資』より一部抜粋・再構成してお届けします。

株は5月に売却すべき? 「セルインメイ」のアノマリーを検証

皆さんは「アノマリー」という言葉をご存じでしょうか。アノマリーとは、理論的には説明することができないものの、経験的に観測されるマーケットの規則性のことを言います。ここからは、相場で囁かれ続けているアノマリーについて、実際当てはまっているのか、実際株価はどのような動きを見せているのか、検証しながら話をしていきたいと思います。

【図解】株を買うべきタイミングの検証

まずは、「セルインメイ」の謎に迫りたいと思います。

「セルインメイ」は、保有している株式は5月に売却するのが望ましいということを示したアメリカの投資格言の一つです。

なお、この「セルインメイ」には続きがあり、格言の全体は「Sell in May and go away. Do not come back until St. Leger day」(5月に売り逃げなさい。(9月第2土曜日の)セント・レジャー・デーまで戻ってきてはいけません)となります。

この格言は、単に5月に株を売るよう注意喚起しているだけではなく、「5月から9月中旬にかけて株価は下がる傾向にあるので、5月のうちにいったん売却しておきましょう。そして、9月中旬からは株価が上がる傾向にあるので、投資を再開するのはそれ以降にしましょう」という意味を含んでいます。

この他にも、株価は特に10月末頃から堅調となる傾向にあることから、毎年10月31日に開催されるハロウィーンにちなんで、「株はハロウィーンに買え」との投資格言もあります。

日経平均を基に株価のパフォーマンスを検証してみた結果

それでは実際、売った方がいいと言われる5月直前の4月末に売って10月末に買い戻す、という戦略は有効なのでしょうか。1991年10月~2023年4月の日経平均株価データから、以下それぞれの戦略を取った場合の株式パフォーマンスを調べてみました。

1.10月末に買い、4月末に売る戦略

2.4月末に買い、10月末に売る戦略

3.売買せず継続保有する戦略

結果として下図の通り、パフォーマンスに圧倒的な差異を見出すことができました。

1.10月末に買い、4月末に売る戦略:資産は391%となる(100万円が391万円になる)

2.4月末に買い、10月末に売る戦略:資産は47%となる(100万円が47万円になる)

3.売買せず継続保有する戦略:資産は177%となる(100万円が177万円になる)

一方で、アベノミクスの取り組みが始まって以降ここ10年(2013年4月~2023年4月)にデータを絞ると、先ほどとは少し傾向の異なる結果が得られました。(下図)

1.10月末に買い、4月末に売る戦略:資産は125%となる(100万円が125万円になる)

2.4月末に買い、10月末に売る戦略:資産は171%となる(100万円が171万円になる)

3.売買せず継続保有する戦略:資産は223%となる(100万円が223万円になる)

長期的には、10月末に買って4月末に売るという戦略は有効かと思われますが、ここ10年については、売買をせずにずっと持ち続ける方がパフォーマンスは高くなっています。

それでは今度はもう少し細かく、月ごとの日経平均株価上昇率の違いはどうなっているのでしょうか。

下の表は過去25年間(1998年6月~2023年5月)の月ごとにおける、日経平均株価の上昇・下落回数と上昇率平均をまとめた表、図は月ごとにおける、日経平均株価上昇率平均を示したグラフです。

11月~4月は上昇傾向、5月~10月は下落傾向にある

これら図表を見ても、11月~4月は上昇傾向にあり、5月~10月は下落傾向にあることがわかります。上昇率平均が1%を超えている月は、3月・4月・11月・12月で、下落率平均が1%を超えている月は、1月・8月となります。

上昇傾向にある11月~4月のうち、1月は下落することが多いという点には注意しておきましょう。

一方で、上表は過去10年間(2013年6月~2023年5月)の月ごとにおける、日経平均株価の上昇・下落回数と上昇率平均をまとめた表、下図は、月ごとにおける、日経平均株価上昇率平均を示したグラフです。

過去10年間で上昇率平均が1%を超えている月は、4月・5月・9月・10月・11月で、下落率平均が1%を超えている月はありません。

これまでセルインメイと呼ばれていた5月の上昇率平均が2.1%と比較的大きく、またこれまで上昇傾向にあった11月~4月のうち12月・1月・2月の上昇率平均がマイナスとなっていることは、非常に興味深い変化であるように思います。

この変化が今後も続くかどうかはわかりません。しかし、過去25年間においても過去10年間においても、4月と11月は総じて強く、1月と8月は弱いことが多いということは、覚えておいて損はないでしょう。

こうしたアノマリーは他にもあります。例えば、4年ごとに実施されるアメリカ大統領選挙は、アメリカの景気と株式市場にも大きな影響を与えます。

『アノマリー投資』(ジェフリー・A・ハーシュ、パンローリング、2013年3月)は、1833年~2011年における大統領選挙4年周期各年のダウ平均年上昇率を以下のように算出し、大統領選挙前年の株式パフォーマンスが突出して高いということを明らかにしました。

1.大統領選挙当年:255%

2.大統領選挙翌年:86%

3.中間選挙年:187%

4.大統領選挙前年:470%

1940年~2022年における大統領選挙前年のダウ平均は、2015年を除き、20回中、19回上昇しています。

大統領選挙前年の株式パフォーマンスが非常に高い理由について、先述の『アノマリー投資』は以下のように説明しています。

「再選を勝ち取るために、大統領たちは痛みを伴う取り組みのほとんどを人気の前半に行う。そして、後半になると景気刺激策を打って、有権者が投票所に出かけるときに最も好景気になるようにしがちである。」

ちなみにですが、アメリカ共和党は小さい政府や減税など、株式市場に好まれそうな経済政策を重視している党でありますが、ダウ平均の上昇率は、

・共和党大統領時:6.8%

・民主党大統領時:10.0%

であり、民主党大統領のときの方が株式のパフォーマンスは高くなる傾向にあるようです。

それでは、日経平均もダウ平均と同様、大統領選挙4年周期の各年で異なる動きを示すのでしょうか。実際に調べてみました。

下図の一番左の棒グラフ群は、1949年~2022年における大統領選挙4年周期各年の日経平均年上昇率平均を表しています。

日経平均においても大統領選挙の前年は全体平均(9.3%)よりも高い上昇率(10.7%)を示していますが、大統領選挙前年よりも大統領選挙当年の方が日経平均の上昇率は高い(23.2%)傾向にありました。

かつてほど顕著な差はない米大統領選前後の株式市場

さらに分析するため、期間をバブル崩壊前(1949年~1990年)とバブル崩壊後(1991年~2022年)に分けたところ(図の真中と一番右の棒グラフ群)、バブル崩壊前もバブル崩壊後も、大統領選挙当年と大統領選挙前年の上昇率は全体平均を上回っており、中間選挙の年の上昇率は全体平均を下回っていました。

ただし、バブル崩壊前は、大統領選挙当年と大統領選挙前年の優位性が顕著であったのに対し(それぞれ40.9%と18.4%)、バブル崩壊後、その優位性は極めて小さいものとなっています(ともに1.1%)。

日本の株式市場において、大統領選挙当年と大統領選挙前年は比較的強気、中間選挙の年は比較的弱気の姿勢で臨んでよい。ただし、最近はかつて示されていたほど大統領選挙4年周期各年におけるパフォーマンスの差は大きくない、と結論付けてよいかと思います。

アメリカ大統領選挙は今年の11月にも本選挙が控えており、株式市場にどのような影響が及ぶのかは注目していきたいところです。

ちなみに、アノマリーには今回紹介したもの以外にも、「干支と株式相場の相関性」や「月初と月末の株価の差」「金曜ロードショー・ジブリと相場の関係」など、様々なアノマリーが存在しています。本書ではそれらのアノマリーを検証し、実際の投資に有意義かどうかを調査しています。

なお、前述したように、アノマリーは理論的には説明できないものとなっています。そのため、これまで見られていたアノマリーが今後も継続するとは限らないということには注意が必要です。

なのなの:兼業投資家

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