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日銀の利上げで生じる「奨学金」の思わぬ誤算 貸与利率が10年ぶり高水準、増加する返済負担

東洋経済オンライン / 2024年4月12日 7時20分

奨学金にも「金利ある世界」が訪れている(撮影:今井康一)

日本銀行によるマイナス金利解除を契機に、国内金利の先高観が強まっている。預金や住宅ローンといった身近な取引はもちろん、金利上昇の影響が意外な分野にも及んでいる。日本学生支援機構(JASSO)が運営する「奨学金」だ。

【グラフ】日本学生支援機構が運営する「奨学金」の貸与利率が急伸

JASSOの奨学金には、無利子の第一種と有利子の第二種がある。このうち、後者の貸与利率(貸出金利に相当)は2022年から上昇に転じ、足元ではおよそ10年ぶりの高水準にある。今後も日銀が利上げを進めれば、低金利時代に奨学金を借りた学生にとって、返済(返還)額の思わぬ増加につながる可能性がある。

奨学金も市場金利に連動

日銀による利上げが、なぜ貸与利率の上昇につながるのか。理由は、奨学金の調達構造にある。

第二種奨学金は、原資の過半を国や金融機関、投資家から調達している。JASSOの2023年度予算では、第二種奨学金事業の財源として約1.5兆円が計上された。このうち、過去に貸与した奨学金からの返還金は6338億円にとどまる。残りは財政融資資金が5869億円、民間金融機関からの借り入れが1510億円、債券の発行が1200億円と続く。

財政融資資金とは、国が債券(財投債)を発行して調達した資金を地方公共団体や独立行政法人などに貸し付ける制度だ。JASSOはそれを借り入れ、奨学金として大学や専門学校などの学生に貸与している。市場金利が上昇すれば、国が財投債を発行する際の金利も上昇する。するとJASSOが借り入れる財政融資資金の金利も上がり、最終的に奨学金の貸与利率に転嫁される。

第二種奨学金には、返済する利率に関して2つの算定方法がある。1つは、奨学金の辞退時や卒業時などの貸与終了時に決定した利率が返還完了まで適用される「利率固定方式」。もう1つは、貸与終了時に決定した利率をおおむね5年ごとに見直す「利率見直し方式」だ。

その貸与利率は日銀の金融政策に左右されてきた。日銀が2013年に異次元緩和を導入すると市場金利の低下を受けて貸与利率も大きく低下し、2016年のマイナス金利導入後は超低金利で推移してきた。

潮目が変わったのは2022年。海外金利の上昇につられて国内の長期金利も上昇し、固定方式の利率が反応。さらに日銀が長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の柔軟化に舵を切ったことで、固定・見直し両方式の利率が本格的に上昇に転じた。

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