イトーヨーカ堂「上場検討」がなんとも心配な理由 顧客理解が欠如したままで、本当にうまくいく?
東洋経済オンライン / 2024年4月12日 20時30分
代わりにヨーカドーが注力するのは「食」の分野だ。今回の発表でも触れられていたように、セブン&アイ・ホールディングスとヨーカドーは食品分野での積極的な連携を続けていく方針だという。さらに、地方店舗の積極的な閉鎖や、都心部での営業強化など、いくつかの具体的な改革も実行に移されている。
ヨーカドーの「顧客理解の欠如」という根本的な課題
このように、いくつかの改革が進んではいるが、根本的な部分での問題があると筆者は思う。ヨーカドー全体に漂う「顧客理解の欠如」の問題だ。
筆者はこれまで、低迷するヨーカドーの原因を探るべく、同社が注力するという都心部(東京23区)の15店舗をすべて訪問し、一消費者の視点からその空間の弱点を分析してきた。その際に指摘した、主な問題点は以下の4つだ。
①どの店舗も、食料品売り場とテナントのチェーンストアにしか客がいない
②改装に伴い、売り場のあちこちに空きスペースがあり、バックヤードが丸見えになっている
③改装店舗では商品構成が大幅に変更されているが、かえってわかりにくくなっている
④セルフレジが十分に機能していない
これらの問題点に共通しているのは、「顧客理解の欠如」だと思う。
例えば、④のセルフレジの件で言えば、ヨーカドーの客層は高齢者が多いにもかかわらず、DX推進のためにセルフレジを増やし有人レジを減らした結果、有人レジに長蛇の列ができている光景をよく目にした。
現場レベルで「誰が」「どのように」店を利用しているのか、あるいは利用する可能性があるのかについての把握が不十分なのではないか。上場を機に、ヨーカドーには自社の店舗の強みと弱みを徹底的に分析し、顧客理解を深めることが求められる。ただ、それはヨーカドーにとって最も苦手な部分かもしれない。相当の覚悟が必要だろう。
では、ヨーカドーの強みを生かすためには、どのような改革案が考えられるだろうか。
筆者は、ヨーカドーの最大の強みは「場所」にあると考える。ヨーカドーの多くの店舗は、駅前の一等地に広大な敷地を持っている。このような好立地を十分に活用しないのは、社会的にも大きな損失だ。土地だけ持って、それを活用しないのは、罪だとさえ言える。
かつて、総合スーパーが全盛だった時代は、「立地」と「商品」の両方が魅力的だったため、相乗効果で多くの客が訪れた。そもそも、「商品」自体の供給量が多くなかった時代において、衣料品から食料品までさまざまなものが1カ所に集まっていることは、大きな優位性になったはずである。また、それらがこれまでより安価で手に入ることも、ヨーカドーで売られる「商品」の魅力を高めていた。
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