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「インドカレー屋」実はネパール人運営が多い理由 産業が育たず、貧困で世界有数の「出稼ぎ国家」に

東洋経済オンライン / 2024年4月13日 12時10分

このプロセスが大流行する中で、ブローカーも出てきました。日本で働きたい人たちからお金を取って、『500万円』が必要な人とつなぐ。中には調理の経験がないのにブローカーにお金を払って日本に来て、カレーを作るような人も増えたんです。そういう人も仕事を覚えお金を貯めて独立していくし、ブローカーそのものを生業とするコックも増えていきました」

インネパを生み出したネパールの貧困

しかし、どうしてネパール人は海外に働きに出ようとするのか。それには、ネパールの国内事情が影響している。

「政治的な混乱もありましたし、何より主要な産業が何もない。山がちな地形だから農業には向いていないですし、内陸国だから貿易も盛んではない。ヒマラヤのトレッキングは素晴らしいですが、そうした観光業は国を支えるだけの巨大なものにはならない。この国にいてはダメだ、という思いを持つ人が多く、海外に行くことそのものが夢になっているんです」

実際、1人あたりの年間所得は1337ドル程度(約20万円。世界銀行による。2022年)で、日本の平均給与である457万円を大きく下回る(ネパールの平均給与は「Average Salary Survey」、日本の平均給与は「令和4年分 民間給与実態統計調査」より)。

そもそもネパールは、民主政になったのが2008年5月とごく最近だ。さまざまな背景があり、産業が育ってこなかった国なのだ。

『カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」』の中で室橋さんは、インネパを経営する多くの人の出身地であるバグルンに赴いている。

「そこは、日本人の目からすると遥かに豊かに見えるんです。自分の庭で食べるものはまかなえるし、飼っている牛からヨーグルトを作ったりもしている。ヒマラヤの麓に本当に美しい景色が広がっている場所でした。

ただ、そこから脱出したいと思っている人も多い。現金収入が得られないからです。一方で国内にとどまって独自の産業を興すべきだと思う人もいて、彼らと飲んでいるときに、考えの違う人が言い合いになる場面に遭遇したこともあるぐらいでした」

主要な産業のないネパールの中でも、さまざまな思惑が交差する。その中で、国外で働きたいという人が、日本などに働く場所を求めにくるわけだ。

「失敗できない」という思いが「コピペ」メニューを作り出す

このような厳しい環境からやってきた人々だからこそ、「コピペ」のようなカレー店も生まれるのだ、と室橋さんは指摘する。

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