「高齢者アンダークラス化」するミドル期シングル 「ゆるいつながり」で親密圏を形成できるか
東洋経済オンライン / 2024年4月15日 10時0分
どういう理由で人々が配偶者のいない生き方を選ぶようになったのか、その理由も本書には列挙してある(資本主義の要請だとは書かれていないが)。東京にシングルが多いのは、地方在住者が家族のもとを離れて東京に進学や就職で集まるからである。これは当然。もう一つは社会進出を果たした女性の晩婚化。シングル女性は移動しやすい。住む場所を変えるほど人は家族形成から遠ざかる。「人口移動によって出生率は低下する」のだ(前掲書、80頁)。
それに女性は地方の伝統的規範を忌避する傾向がある。「男尊女卑や過度な性別役割分業といった、女性にとっての負の要素」(前掲書、94頁)から離脱するために地方圏出身女性が東京区部へ移動している可能性はあると本書は論じている(前掲書、94頁)。そこまで断言していないのは、データが不足しているからだろうけれど、私もそうだと思う。彼らは「画一性からの脱却と多様性への渇望」に駆動されて大都市圏に引き寄せられる(前掲書、97頁)。
次の論点は、このシングルたちはどのような社会的な関係を形成しているのかである。彼らが高齢化したときにアンダークラス化しないために欠かすことのできない条件は地域コミュニティにコミットしていることだからである。果たしてミドル期シングルたちはどのような「親密圏」を形成しているのか。
これについては男女差が際立っている。男性シングルは親密圏の形成が苦手で、女性のほうがずっとその点ではすぐれている。これはどなたも経験的にわかるだろう。
男性シングルは親族との関係が希薄であるが、女性シングルは「ひとり暮らしに伴う経済的不安、孤独、犯罪に巻き込まれる不安、病気の不安を男性以上に感じやすい分、親やきょうだいと頻繁に連絡をとって、結婚によって築く親密圏に代わる親子関係を軸とする親密圏を築いています。」(前掲書、156頁)。
おそらくリスクに対する不安が男性よりも強いせいで、女性のほうが「家族に代わる多様な生活共同体(別居パートナー、コレクティブハウス、シェアハウスなど)」(前掲書、156頁)の形成についても、あるいは「趣味やレジャーで会う人や同窓生などの“柔らかい紐帯”を“固い紐帯”と共に築いている人が男性より明らかに多いといえます。」(前掲書、156頁)。
男性は親族のみならず仕事以外の友人・知人とのネットワーク形成にも未成熟である。だから、高齢期に病気になった場合にもケアマネージャーや行政に優先的に頼ろうとする。「日ごろから頼ることのできる家族的関係や友人知人関係を作っていない結果といえるでしょう。(……)ミドル期シングルの環境は、非家族的親密圏も中間圏も広く形成されている状態にはなく、孤立化するリスクを抱えているといえます。」(前掲書、157頁)その通りだと思う。
シングルたちはどう生きるか
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