「高齢者アンダークラス化」するミドル期シングル 「ゆるいつながり」で親密圏を形成できるか
東洋経済オンライン / 2024年4月15日 10時0分
親はいずれ死ぬ。きょうだいとの縁も薄くなる。仕事も退職する。そのあとにシングルたちはどうやって生きるのか。ただ「生きる」のではない。一人の市民として、尊厳を以てどうやって生きるのか。
本書では「ハンカーダウン(hunker down)」という言葉が使われているが、これは人々が「より私的な空間に閉じこもり、他者への信頼度が下がり、なるべくかかわらないようにしている」状態を意味するのだそうである。「引きこもり」である。要するに地域コミュニティにコミットしない状態のことである。もともと日本では地縁共同体が衰退しているうえに、「都会のミドル期シングルはあまり地域での関係を持つことに積極的ではない」(前掲書、162頁)。
しかし、地域コミュニティへのコミットメントは「孤立化」を防ぐ最も効果的な手立てである。どのようにしてミドル期シングルに対して地域コミュニティとの関わりを持たせることができるのか。それが実践的な課題になるのだが、アンケートに回答したミドル期シングルの8割は地域活動に参加していない。
「サードプレイス」という概念がある。「サードプレイスとは人々が自宅(ファーストプレイス)や仕事の場所(セカンドプレイス)以外で、社会的なつながりを築き、リラックスや交流を楽しむ場を指します。」(前掲書、173頁)。
コーヒーショップや図書館や公園がそれに当たる。ミドル期シングルは「ツーリングに出かける先、コンサート会場やスポーツ観戦の場所などの地域コミュニティには存在しない『イベント』的サードプレイス」を挙げているが、それは「“その場を楽しむ”ということに限定されており、必ずしも、何かあったときに支え合う、家族の代替になるものではなさそう」である(前掲書、173頁)。
ミドル期シングルは表面的には活発な社会的関係を形成しているように見えても、自分が高齢期になったときに「生活に不安のない人」は全体の3.7%しかいない(前掲書、176頁)。「病気になったときに身の回りの世話をしてくれる人がいない、という不安は64%にも上り」、「自分が『孤独死』する不安を多少でも持っている人は半数に上ります。」(前掲書、176頁)。「病気になったときや介護が必要になった場合に誰を頼ればよいのか、高齢期になってお金は足りるのだろうか、住むところはあるのだろうか、そして災害時に誰が助けてくれるのか」(前掲書、176頁)という不安を多くのミドル期シングルは抱いている。
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