卵子凍結を選んだ30代女性が考える「自分の価値」 東京都の助成事業に予想の7倍・1500件超の申請
東洋経済オンライン / 2024年4月16日 11時50分
必須となっている説明会の申し込みは9600件を超えており、2024年度も事業は継続。予算の規模は前年の5倍に増えた。
卵子を凍結して4年。菜緒さんはパートナーと巡り合った。
彼は医療関係者だったこともあり、「卵子を凍結してある」と菜緒さんが告げると「自分の体のこと、よく学んで、よく考えているんだね」と、好意的に受け止めてくれたという。
そして今、妊娠に向けて一歩を踏み出した。妊娠できるかどうかは、誰もわからない。先は長いかもしれないが、40歳になった菜緒さんにとって、36歳で採卵した卵子の存在は励みになる。
こうした経験をYouTubeなどで伝えている菜緒さん。自身が卵子凍結した当時ほどではないが、今でも、身近に卵子凍結について話す相手がいない女性は多い。動画を見た女性から、メッセージをもらうこともある。
「たくさんの女性が、妊娠しないまま年齢を重ねることに危機感を持っています。それに抗うために卵子を凍結するという方法が登場しましたが、そこにも不安や迷いがたくさんあります」
菜緒さんに相談を寄せた女性たちは、「こんなに大変だなんて、知らなかった」と苦労を打ち明けることもある。
精子提供を考える女性も
卵子凍結をする人の多くが、未婚者だ。卵子凍結ができたあとも、なかなかパートナーが見つからず、歳月が経つことにプレッシャーを感じる人も多い。精子提供を受けることを考え始めた女性もいる。
でも、日本で第三者から精子をもらえるのは、無精子症などで悩んでいる夫婦に限られる。昨年、第三者からの精子提供などを規定する新法の案がまとめられたものの、提供を受けられるのは婚姻関係にある夫婦だけ。シングル女性は対象外となっている。
未婚女性が精子提供を受けるには、海外のエージェンシーに依頼するかたちになり、そのハードルは、かなり高いといわざるをえない。だが、「選択的シングルマザー」になることを決断した友人に、菜緒さんは心からエールを送る。
「簡単なことではないけれど、素晴らしい決断です。1人での子育ては大変だと思うので、生まれたら、私は手伝いにいきたいです」
女性たちに希望を与える卵子凍結だが、課題もまだまだある。
東京都に先んじて、2015年に少子化対策の一環として卵子凍結の助成事業を行ったのは、千葉県浦安市だ。
事業は2018年に終了し、卵子凍結を行ったのは34人。1人だけ凍結した卵子で出産した。凍結卵子を使わず自然妊娠などで出産した人が5人いたが、ほとんどの卵子はまだ眠っている。
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