卵子凍結を選んだ30代女性が考える「自分の価値」 東京都の助成事業に予想の7倍・1500件超の申請
東洋経済オンライン / 2024年4月16日 11時50分
当時、順天堂大学医学部附属浦安病院リプロダクションセンター長として、この事業を担ったのが、産婦人科医の菊地盤医師(メディカルパーク横浜院長)だ。最近、凍結した人へのアンケートが実施されたが、「産めない状況が変わっていないから、まだ産んでいない」という解答が多かったという。
「凍結した女性たちは、産めない状況が変わることを期待して凍結したわけですが、5年経っても変わっていない。これでは少子化対策になりません。凍結した女性が個人的に頑張るだけではなく、男性も加わったもっと根本的な議論を始める必要があります」(菊地医師)
「精子凍結事業」には無関心
ちなみに浦安市のこの事業は、精子も凍結することができた。
精子も老化するものの、卵子ほど明確な影響はない。でも、がん治療を受ける前には精子を凍結しておく男性もいるので、浦安市は卵子、卵巣組織のみならず精子の凍結も助成の対象とした。
しかし、精子の凍結に関心を持った報道関係者や市民はおらず、同事業は“初の自治体による卵子凍結事業”として話題をさらった。
それでも、菊地医師は「事業は、意識を変えた」と言う。
卵子凍結の前には妊孕(にんよう)性に関する説明会を行った。すると説明会の後「妊娠は早いほうがいいことがよくわかった」と自然妊娠したり、すぐに不妊治療を始めたりして出産した人が一定数いた。
浦安の事業の経験から、菊地医師は東京都から制度設計について助言を求められたときも、説明会の大切さを強調し、このスタイルは都の助成事業にも受け継がれた。
一方で、卵子凍結をした未婚者の出産については、菊地医師も難しさを感じている。
「例えばフランスでは、未婚の女性でも、同性愛のカップルでも、卵子や精子の提供を受けられ、子どものいる家庭を築くことが法的に認められています。しかし、日本では第三者の精子、卵子をもらうことについて、法整備がまだできていません」
卵子の時間を止めておく
卵子凍結は、凍結することだけを考えれば、単に「卵子の時間を止めておくだけ」のように見える。一見、とても合理的な話だ。しかし、そこには、卵子を凍結した女性たち1人ひとりの、命や家族に対する想いがある。
卵子凍結という技術がもたらした可能性は、社会や家族を変えるのか、それとも日本は、やはり従来の家族観にしがみつき続け、単なる「お守り」として、一時の安堵感のサービスとして未婚女性たちに凍結の助成を広げていくのか。
いずれにせよ、卵子凍結を、年齢にプレッシャーを感じている女性だけの問題としてはいけない。
子どもが欲しいのに産めない人が、なぜこんなにたくさんいるのか、産みたい人がさまざまな生殖技術を使うことについて、どんな話し合いが必要なのか。卵子凍結への注目を機に、みんなに考えてもらいたい。
河合 蘭:出産ジャーナリスト
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