先進国が掲げる「法の支配」のダブルスタンダード 西洋基準たる「万国公法」の呪縛から脱する時だ
東洋経済オンライン / 2024年4月16日 9時0分
岸田文雄首相が4月8日から14日までアメリカを国賓待遇で訪問した。11日には連邦議会上下両院合同会議で演説を行った。訪米前には「国際社会が歴史的な転換点を迎える中で、未来に向けた演説にしたい」と語っていたが、内容はどうだったか。
「私たちは今、人類史の次の時代を決定づける分かれ目にいます。米国が何世代にもわたり築いてきた国際秩序は今、新たな挑戦に直面しています。そしてそれは、私たちとは全く異なる価値観や原則を持つ主体からの挑戦です。自由と民主主義は現在、世界中で脅威にさらされています」として、だからこそ「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序や、平和を守るというコミットメントは、引き続き決定的な課題であり続けます」と日米同盟の前例のない高みへの到達を強調した。
「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」という表現は、首相演説に金科玉条のごとく登場するフレーズである。
「はて?」法の支配とは
この4月に始まった朝ドラ「虎に翼」は、戦前に日本初の大学女子部法科に通い弁護士となった主人公・寅子(ともこ)の物語だ。法律はすべての国民の権利を保障するべきなのに「婚姻状態にある女性は無能力者」という法律上の事実に納得がいかず「はて?」を連発する。戦後憲法では男女平等が掲げられたが、寅子は、そこに立ちはだかる「ガラスの天井」と闘う。
「法の支配」という言葉を、私たちは、世界が守っていかねばならぬ普遍的原理だと捉えている節があるが、先進国以外の国々は「はて?」と首を傾げている。
たとえばウクライナとパレスチナ、2つの戦争には国連の矛盾がまざまざと浮上している。ウクライナには国際法上の支援を適用した一方、パレスチナには人道上の支援すらしないのだ。法の支配に基づいてハマスを批判するのに、イスラエルの国際法違反は問わない。こうした先進国のダブルスタンダードに途上国の人々は「はて?」を連発している。
先般、筆者が参加したある国際シンポジウムでは、途上国の高官が「世界の人口のマジョリティがグローバルサウスであるにもかかわらず(われわれの)声が届かない。多国間システムが機能していない。別のブレトンウッズ、別のマーシャルプランが必要だが、もはやアメリカがその中心にいないことを認めるべきだ」と率直に語った。
特にアフリカ諸国は、欧米による過去の植民地支配にも反発を強めており、先進国中心の世界秩序に異を唱える動きが顕在化している。
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