先進国が掲げる「法の支配」のダブルスタンダード 西洋基準たる「万国公法」の呪縛から脱する時だ
東洋経済オンライン / 2024年4月16日 9時0分
「米国は独りではありません。日本は米国と共にあります。日本は長い年月をかけて変わってきました。第2次世界大戦の荒廃から立ち直った控えめな同盟国から、外の世界に目を向け、強く、コミットした同盟国へと自らを変革してきました」
「地政学的な状況が変化し、自信を深めるにつれ、日本は米国の最も近い同盟国という枠を超えて、視野を広げてきました。日本はかつて米国の地域パートナーでしたが、今やグローバルなパートナーとなったのです」
自発的隷従の道を歩むのか
「はて?」。これは日本が、今後はアメリカの子分としてではなく、対等以上のパートナーとして世界をリードしていくという突き抜けた意思表示なのか。あるいは、中国を名指しして「国際社会全体の平和と安定にとっても、これまでにない最大の戦略的な挑戦」と強調したが、これからはアメリカではなく日本が前面に出て中国と対峙していこうという意志の表れなのか。後者だとすれば、アメリカ一極構造から抜け出せない「自発的隷従」と言わざるを得ない。
日露戦争前夜の1903年、新聞には「日英同盟の風刺画」が掲載された。ロシア帝国が満州から朝鮮半島に触手を伸ばす中、その南下を防ごうとイギリスは、ロシアから火中の栗(朝鮮) を日本に拾わせようとする。その後ろで、アメリカは様子をうかがっている。今、プレイヤーを多少入れ替えるだけで、当時と同じ光景が目に浮かぶ。
新たな国際秩序の構築は世界の合意事項だ。今、戦争などしている場合ではない。感染症、気候変動、生物多様性といった人類共通の課題に対し、イデオロギーや価値観の対立を避け、利害の相違を超えて、国際社会が協力して解決策を模索しなければならない。我々の眼前にあるのは「米中二極化」ではなく、グローバルサウスを含めた「全員参加型」の国際秩序である。
途上国が、欧米が主導する国際秩序のダブルスタンダードを見抜いたところから、「文明国」と「野蛮国」の立ち位置は逆転した。西郷が述べた「いつくしみ愛する心」を基に、地球全体が慈愛に満ちあふれるような「シン文明社会」を築かなければならない。
日本に求められるのは、何がなんでも欧米のような文明国でありたいという「万国公法」の呪縛から脱し、「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」に新たな価値基軸を打ち立て、アップグレードさせていくことだ。
岸田首相が言うように、今は「人類史の次の時代を決定づける分かれ目」である。
小原 泰:シン・ニホンパブリックアフェアーズ代表取締役
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