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「ガチャで借金200万円」唯一の居場所とその代償 頼りにされている、期待されていると感じた

東洋経済オンライン / 2024年4月19日 12時0分

私が不思議だったのは、中学時代、ユウイチさんが連日のように自宅までかばんを届けても、それを受け取った保護者は「持ってきてくれたんだ」「ありがとう」と言うだけで、自分の子どもがいじめの加害者であることに気づく親は誰一人いなかったということだ。被害者側から見える光景と、加害者側から見える光景はここまで違うのか。

「今でも夢に(いじめ加害者が)出てきます。そんな日は当時の恐怖や惨めな気持ちがそのままよみがえってきます」

高校卒業後は介護施設で働いた。正社員として月4、5回の夜勤をこなしても、月収は20万円ほどで待遇は劣悪だった。加えていつまでも仕事に慣れることができなかった。

ユウイチさんがおむつ交換をするとたびたび排泄物が漏れてしまう。また、軽度の認知症の入居者の食事介助でおかゆばかりを食べさせていたところ、「おかずも食わせろや!」と怒鳴られたこともあったという。

振り返ってみると子どものころからスキップやバレーボールのサーブ、縄跳びの二重跳びができないなどとにかく不器用だった。いわゆる三角食べも苦手だった。「自分におかずとご飯を順番に食べる習慣がないので、(入居者にも)同じことをしてしまったんです」。

発達障害の診断、ゲームとの出合い

もしやと思って精神科を受診したところ、発達障害と診断された。介護施設は4年ほどで退職。その後は1年契約のパートとして倉庫内作業の仕事に就いた。

ゲームを始めたのはちょうどそのころ。あらゆる人間関係から排除され続けてきたユウイチさんにとって、生まれて初めて自分を受け入れてくれたコミュニティー。そこで得られる刺激には、抗いがたい“中毒性”があった。

借金の返済が滞るようになったところで弁護士に相談をしたものの、親にばれて実家を追い出されてしまう。弁護士には自己破産を希望したが、「ゲーム課金での自己破産はできない」として任意整理を勧められた。今は家賃3万円のアパートで暮らしながら、毎月約3万円の返済を続けている。さらに今年3月末には10年近く働いたパートの仕事を雇い止めになった。両親とは今も絶縁状態だという。

ユウイチさんの話を聞いていて引っ掛かったことが2つある。

1つは、「自己破産はできない」という弁護士の説明だ。たしかにゲーム課金は浪費に当たるとして自己破産が認められないことがある。一方でユウイチさんはゲーム依存専門の心療内科に通い始めたほか、一時的に携帯をガラケーに変えるなどの努力をしている。任意整理を始めてから5年。借金はまだ半分近く残っているといい、生活再建を第一に考えるなら、弁護士は安易に任意整理を持ち掛けるべきではなかったのではないか。

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