米大統領選に翻弄される日鉄のUSスチール買収 株主総会で賛成を得たが買収は無事成立するか
東洋経済オンライン / 2024年4月19日 7時30分
「USスチール(USS)は1世紀以上にわたりアメリカの象徴的な企業だった。今後も完全なアメリカ企業であり続けるべきだ」
4月17日、ペンシルベニア州ピッツバーグにある全米鉄鋼労働組合(USW)の本部を訪れたアメリカのバイデン大統領は、冒頭のように語り、集まった組合員から喝さいを浴びた。この発言を受けて、日本製鉄はUSSと共同で以下のような趣旨のステートメントを翌18日に発表した。
「すべてのステークホルダー、アメリカ鉄鋼業およびアメリカ全体に多大な利益をもたらします」「USSはアメリカの会社であり、本社はピッツバーグで変わりません」「雇用を守ります。工場閉鎖も行いません」
日鉄によるアメリカの名門鉄鋼メーカー・USS買収が、大きな節目をクリアしたのはほんの数日前のことだ――。
株主総会では承認されたが
4月12日、USSの特別株主総会がオンラインで開かれた。日鉄による買収提案は総会での投票総数の98%超、発行済み株式数の71%の賛成で承認された。
当然といえば当然だ。日鉄が提示した1株55ドル(総額2兆円超)は、昨年12月の買収発表前におけるUSSの株価の40%増しの条件。USSが身売りを含めた「戦略的選択肢」の検討を公表した昨年8月以前の株価に対してなら140%のプレミアム。USSの取締役会も、議決権行使助言会社も、株主に対して買収提案への賛成を推奨していた。
しかし、買収の先行きはまったく見通せない。
目下、最大の障害となっているのはUSWの反対だ。USWはアメリカの鉄鋼2位・クリーブランド・クリフスによるUSS買収を後押ししており、日鉄の買収に対して「失望した」「献身的な労働者の懸念を脇に押しやり、外資系企業に売却することを選んだ」などと非難している。
これに政治も呼応する。日鉄による買収計画が発表された後、共和党の大統領候補であるトランプ氏は「絶対に阻止する」と表明。バイデン大統領も「アメリカ国内で所有・運営されるアメリカの鉄鋼企業であり続けることが重要だ」との声明を発表していた。
問題をややこしくしているのが、今年がアメリカ大統領選挙の年で、かつUSS本社が「スイングステート」(選挙のたびに勝利政党が替わる「揺れる州」)として知られるペンシルベニア州にあることだ。
激戦が予想される大統領選挙をにらめば、強い集票力を持つUSWが反対している以上、政治的に買収支持の表明は難しい。バイデン政権は反対ではないとされるが、4月10日の日米首脳共同記者会見でもバイデン大統領は「アメリカの労働者に対する約束を守る」と述べるにとどめた。さらに、冒頭のようにUSWに寄り添う姿勢を改めて強調した。
日鉄のアメリカでの商売はわずか
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