1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

娘が振り返る「山田太一さんが家庭で見せた素顔」 両親の思い出が主題の映画「異人たち」が公開

東洋経済オンライン / 2024年4月20日 13時0分

もちろん母を筆頭に、子どもたちとの話もすごく作品に影響していたなと思います。ただ父は忘れちゃうんですよ。だから母が提供した話であることを忘れて、あたかも自分が考えていたかのようにエピソードを書くので。母は怒ってましたけど(笑)。

――不勉強ながら、山田太一さんの作品が日本国内だけでなく、海外でも出版されていたというのは初めて知りました。

父の小説はファンタジー要素が強いからでしょうか。母は世界に通用すると思ったようです。

おそらく子育ても終え、両親も看取り、何か目標が欲しかったのではないかと思います。急に翻訳版の出版を目標に頑張ると言い出して。父は作品に集中したいので、あまりピンと来てなかったみたいですけど。

弟はアメリカ・ロサンゼルスを拠点にしているのですが、母は70を過ぎて弟の近くのマンションを借りて。弟と一緒にアメリカの法律家と会いに行ったりして。とにかく元気で、パワフルな母でした。

――やはりお母さまは、お父さまの作品が大好きだったのでは?

それはあったと思います。照れ臭かったのか、ストレートに褒めることはなかったですが。あそこまで頑張りたいと思えるのは好きじゃなかったらできないと思います。

海外の脚色を楽しみにしていた山田太一氏

――山田太一さんといえば、脚本を勝手に変えることをよしとしていなかったことでも知られています。ですが本作では、原作にある男女の恋愛模様ではなく、アンドリュー・ヘイ監督の大胆な脚色により、男性同士の恋愛模様として脚色されています。山田さんはむしろその脚色を楽しんでいたと聞きましたが。

そうですね。イギリスの作品なので、同じにしろというのがまず無理ですから。父もそれがどういうふうに変わるのか、楽しみだったみたいです。

――『異人たち』を観ていると、山田太一さんが考える家族への思いを感じます。

父は8人兄弟の7番目として育ち、小学4年生で母親を亡くしました。だからもしかしたら、自分が得られなかった親子の関係をわたしたち子どもに与えようという思いで頑張ってくれていたのかなと思います。

父は幼少期に家族だけで食卓を囲むことなどなかったと言っていたので、あの家族団らんの空気感は父にとっても初めてのことだったのかと、今さらながら気づき、驚いています。

――家族ですごく仲良く過ごされてたようですね。

でもうちはケンカもすごかったですよ。親子げんか、夫婦げんか、兄弟げんかとまあにぎやかで。あの小説の、夢のような温かいだけの家族ではなかったのですが、でも基本、仲がよかったんだろうなと思います。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください