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激しく扉を叩いて…夜中「紫式部」訪れた男の正体 「布一枚残して消えた」空蝉と紫式部の共通点

東洋経済オンライン / 2024年4月21日 14時0分

空蝉は、『源氏物語』第2帖「帚木」で初登場を果たす。光源氏にとって、17歳の夏だ。

ある日、光源氏は紀伊守(伊予介の息子)の邸に泊まることになった。そして、そこに伊予介の若い後妻もいるという情報を耳に挟んだ途端、早速興味が湧いてきた。彼はみんなが寝静まったタイミングを見計らって、後に「空蝉」と呼ばれる若妻が1人で寝ている部屋に忍び込んでいく。若いって血気盛んで怖いもの知らずだなぁ、とその思い切った行動に感心さえ覚える。

動揺を隠しきれない空蝉を前にして、光源氏は次のような太々しいセリフを言い放つ。

「うちつけに、深からぬ心のほどと見給ふらむ、ことわりなれど、年ごろ思ひわたる心のうちも、聞こえ知らせむとてなむ。かかる折を待ちいでたるも、『さらに浅くはあらじ』と、思ひなし給へ」

【イザベラ流圧倒的意訳】
「突然のことで、単なる出来心だと思いますよね? ごもっともですが、長年思い続けた心の内を知ってもらおうと思って。このような機会をずっと待っていて、やっとあなたが現れたのだ。いい加減な気持ちなんかじゃないです!」

ついさっき知ったばかりなのに、よくぞ「年ごろ思ひわたる心」と言えたものだ。チャラいイタリア人男性は「君に会うために生まれてきたんだ、俺」というような不毛な口説き文句をぶちまけてくることもあるが、光源氏もそれに負けないくらいの大胆さを見せている。

空蝉は抵抗を示すものの、相手は相手だし、結果的に2人は一夜を共に過ごしてしまう。光源氏は、家来筋の妻に手を出したことに対して一切の後悔はなく、むしろそのスリルを楽しんでいるご様子。しかし、それ以降女は用心深く身を守る。決して会おうとせず、頑なに彼のアプローチを拒否し続けた。

そして義理の娘と一緒に寝ていたある夜、空蝉は入ってくる光源氏の気配をいち早く察知し、袿を脱ぎ捨てて、下着一前で部屋から逃げ出す。光源氏はそこに寝ていた女性こそ目当ての女だと思って、ことに及びそうになったところでやっと勘違いに気づく……。彼に残されたのは、空蝉の匂いがたっぷりと染み込んだその一枚の布だけである。

さすが平安時代、求愛活動は常に暗闇の中で行われていたので、こうした失敗も現実世界でも珍しくなかっただろう。引き下がるわけにもいかない光源氏は、「僕がずっと会いたかったのは、まさに君なんだ!」という真っ赤な嘘を吐いて、なんとかその場を丸く収めたのであった。

空蝉が逃げざるを得なかった事情

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