「ソロ活」の心地よさの先にある自由と社会的孤立 若者の孤立を防ぐ立場から見たシングルと役割
東洋経済オンライン / 2024年4月24日 10時40分
しかし僕はその時間が心地よかったことを覚えています。
「自助努力と自己責任の物語」は本当か
さらに酒井は、約2500名のミドル期シングルの人びとの休日の過ごし方を調査した結果、5割を超える人びとが家でひとりで過ごしていると答えたことを報告しています。そしてこのようなタイプの人びとには、以下のような傾向がみられるといいます。
(前略)低学歴、低年収、無業、非東京区部出身者、友人・知人が少ない、電話やインターネットでも交流していない、サポートネットワークが弱く、精神的にも身体的にもあまり良くない傾向があるなど、列挙すれば、社会的に望ましいとされることはなく、この点ではシングルの「役割のない個人」として生きる負の側面が強く出ているといえます。
(中略)すべてがそうしたシングルであるわけでなく、「おこもり型」の中にも多様性はあるでしょう。ただ、社会的に孤立している、その傾向のある人が、一定数含まれており、孤立している、または孤立するリスクが高いタイプであるといえます。(前掲書、218-219頁)。
ここから分かることは、シングルであることに自由と孤立の両面が含まれることです。
さらに重要なことは、僕たちはこのライフスタイルを「自分で選んでいる」と思い込まされてはいないだろうか、という問いです。つまり、自分が今いる境遇は自分で選んだものであり、自己責任であるということ。本来ならチャレンジすることもできたのにしなかった、もしくはチャレンジして失敗したのだから自己責任であるということです。
一方で成功した人(有名だったり、経済的な富を得ていたりする)は自助努力によって自己実現を果たしたのだという物語が語られます。
しかしそれは本当なのでしょうか。
例えば、僕は1983年生まれでバブルを知りません。特に羨ましいとも思わないし、その時代を生きた人びとから話を聞くと、むしろ経験しなくてよかったと思っているほどです。
しかし僕自身、バブル崩壊直後に就職活動をしていたらどう思っただろうと考えるのです。誰でも就職できた状況から、自分のせいでもないのに急に就職氷河期に入ってしまった。梯子を外されたと思うことでしょう。まったくもって自己責任ではありません。
反対に自己実現しているように見える人であっても、完全に自分の努力で成功した人なんて存在しません。もちろん努力それ自体を否定するものではないですが、必ずその人の置かれた環境が左右しているはずです。
「役割のない個人」
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