「ソロ活」の心地よさの先にある自由と社会的孤立 若者の孤立を防ぐ立場から見たシングルと役割
東洋経済オンライン / 2024年4月24日 10時40分
終章において宮本みち子と大江守之は、シングルの人びとを「役割のない個人」と表現しています。
人は様々な役割を負って生きています。現代では、公的生活領域においては職業を通して社会的役割を果たし、私的生活領域では子どもや配偶者その他の近親者を気遣い、子育てや家族の世話や介護を担うことが最も重要な役割となっています。また、職場や家庭以外でも何らかの役割をもっています。
ところがシングルは、職業上の役割の比率が高く、子や配偶者などに係る役割をもっていません。しかも、中間的生活領域での役割のない人も多いのです。ただし、同居していない親やきょうだいなどへの気遣いや世話を担っている人はいます。(中略)
シングルが増えていく社会が、「役割のない個人」の増加と重なるとしたら何が問題になるでしょうか。今、生活保障改革の過程には2つの「個人化」のベクトルが働いています。そのうちの1つは、従来の社会保障制度が解体して自己責任に負わせる個人化のベクトルです。つまり、セーフティ・ネットを取り外して、生活保障を個人の努力と責任に転嫁する新自由主義の方向で、「社会からの個人の離脱」といえるものです。
もう1つの個人化は、家族の標準モデルを前提とせず、個人の自由と多様性を認めつつ、社会連帯による生活保障を推進する方向です。たとえば、結婚のあり方を柔軟にし、子どもの人権を擁護しつつ、子どもを産み育てやすい環境を整備するものです。このような施策は、公助や共助という社会的連帯の推進と一体のものと考えることができます。(前掲書、253-254頁)。
人は必ず有限の自然・社会的環境の中で育ちます。僕が「ソロ活」を理想だとした背景には、人として担わされる役割を「下ろしていく」ことがクレバーな生き方だと思っていたからだと思います。シングルのもつ自由で自己実現的な側面だけを捉えていたのでしょう。
しかし僕もミドル期前期の年齢になり、バブル崩壊後の低迷する経済状況もいまだ継続している中では、自分のことだけを考えてもいられないという気がしてきました。
自分たちの生活圏で担えそうな役割から
これからの社会について考えるとき、上に引用した「個人化」のベクトルのうち、社会全体として目指すべきは後者だと考えています。
しかし同時に個人レベルで考えているのは、今までの役割を担わされてきた社会ではなく、例えば若者が役割を担いたいと思えるような社会をつくっていきたいということでした。
そのためにはどうすればいいのか。まずは日本全体、世界全体を一気に変えようと思うのではなく、自分たちの生活圏で担えそうな役割を担っていくことから始めてみようと思っています。
個人が変わることで社会が変わり、社会が変わることで個人も変わりやすくなっていくことが、今後の未来を少しでも明るいものにしてくれるのではないか。本書はこのような行動を始める根拠の一つとなる本です。
青木 真兵:「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」キュレーター、古代地中海史研究者、社会福祉士
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