大谷翔平と水原一平、くり返す「側近の裏切り」 「あの人がだますなんて」気づけないカラクリ
東洋経済オンライン / 2024年4月24日 9時30分
ほんの数カ月前、いや、最近まで私たちは翔平と一平の友好的なムードを温かく見守っていたはずだった――水原一平氏の裏切りが明るみに出るまでは……。
アメリカ・メジャーリーグで活躍する大谷翔平の元・通訳、水原一平氏が関与したとされる違法スポーツ賭博。報道によると、水原氏はその行為を大谷氏にひた隠しにし、大谷氏の口座から大金を盗み取った銀行詐欺容疑で訴追されている。真実はこれから連邦裁判で明らかになるだろうが、これまでも歴史上でくり返されてきた「まさか、あの人に裏切られるなんて……!」という背信行為が、なぜいともやすやすとなされるのか。
過去にイグ・ノーベル賞を受賞した認知心理学者らによる最新作『全員“カモ”』には、その「だまし・だまされる心理」の糸口が解説されている。
疑うことさえ忘れる
人は、つねに何かを想定しているが、それが危険なものになることがある。何かを想定していることに無自覚だったり、想定を裏づけるはずの証拠がいつのまにか不十分になっていたり(または、そもそも最初から裏づけになっていないことに気づいていない)、想定がある一線を越えて引くに引けなくなったときなどだ。想定に固執するあまり、疑うことさえ思いつかなくなるのだ。
科学や医学がテーマの「Slate Star Codex」というブログに投稿した匿名の投稿者は、思い込みと証拠のあいまいな関係性について次のように雄弁に説明している。
内側から見ると、確固たる考えはどれも、それがどれほど支持されているか、またはその考えにどのようにしてたどり着いたかにかかわらず、ほぼ同じように感じられる。つまり「入手できる証拠をすべて調べた結果、私はこの考えにかなり自信があります」という感覚と、「証拠とはほとんど関係のない極めて文化的、社会的、個人的な理由で、私はこの考えを支持します」という感覚を本質的に区別することは難しい。
思い入れがあまりに強くなると、疑問を抱く必要を感じなくなり、その問題についてこれ以上学ぼうとせず、自分の見解と相反する新たな証拠を示されても、軽視するか、見て見ぬふりをするようになる場合がある。これは「故意の盲目」と呼ばれる。
多くの法的場面では、入手できる証拠に気づかなかったことは、詐欺を「見逃した」り、知らぬ間に犯罪に関与したりしていることの抗弁にはならない。
ある想定に対する強い思い入れは、世界についての他の想定に波及効果を及ぼすことすらある。思い入れが強くなりすぎると、より根拠のある想定を論理的にあきらめざるをえなくなる恐れもある。
私もあの人も……誰もが「冷静」ではない
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