ガザめぐりイスラエルとイランが戦い合う理由 イランを国際的に孤立させようとするイスラエルの思惑
東洋経済オンライン / 2024年4月24日 5時50分
イスラエルにとっては、イランが大規模攻撃に踏み切ったことにより、世界の世論を味方につけることができた。加えて、反イランという共通項でアラブ諸国との連携も確認することができた。それまで世界に吹き荒れていた反イスラエルの嵐は弱まった。
報復を宣言したとはいえ、思わぬ成果を得たイスラエルは、ここで自制したほうが得策だと筆者は考えていた。しかし中東には中東のルールが存在する。次の攻撃を阻止するために、何らかの対応を取らなければならない。
イスラエルの国是は「全世界に同情されながら死に絶えるよりも、全世界を敵に回しても生き残る」ことだと言われる。世界にどう見られるかよりも、自国の安全は自分たちで守るというのが基本的なスタンスなのである。
2024年4月19日、イランで無人機3機が撃墜されたとのニュースが報じられた。イラン中央部の都市イスファハン近郊の空軍基地がターゲットにされた。イランのレーダーシステムが、イラン領空に侵入した航空機を検知しなかったと言われており、イラン国内から発射された可能性があるという。
この件に関してもイスラエルは沈黙を貫いているが、イスラエルによるものだろう。4月18日、イスラエルがアメリカに対して、24時間から48時間以内にイランを攻撃する予定である旨を伝えたとの情報もある。
イランに対してどの程度の攻撃を仕掛けたのか、どの程度の被害があったのかは明確ではない。イスラエルを飛び立った戦闘機がシリア、イラクの上空を抜けてイランを攻撃したとの指摘もある。
ただ、イランの攻撃に比べるとかなり小規模なものだった。イランのアブドラヒアン外相は「空爆やドローンの攻撃ではなく、おもちゃのようなものだった」と述べている。
両国とも戦争の拡大は望んでいないが…
イラン・イスファハン州には核施設があるが、イラン国営テレビは「核施設に被害はない」と報じている。今回の攻撃は、イスラエルがイランの防空システムをかいくぐり、核施設を射程に収めているとのメッセージだと取る向きもある。
現状を見る限り、イスラエルもイランもこれ以上の戦争拡大は望んでいない。それでもなお、イスラエルとしてはハマス、ヒズボラ、フーシ派という抵抗の枢軸を影で操るイランを「表舞台」に引きずり出すために、一連の攻撃を行おうとしたのか。
何正面もの戦いを強いられているイスラエルにとって、強大な軍事力を誇るイランへの直接攻撃はかなり危険な賭けである。けれどもイランという「ラスボス」を世界の批判にさらさせ、孤立させることが目的だと考えれば、おおむねその作戦は成功していると言える。
イスラエルの外交・防衛筋の中には、「イランは大規模な戦争の準備をしてきた。彼らは戦争への意欲を高めつつあり、われわれが戦略的に対処しなければ、本格的な戦争に巻き込まれることになる」と警鐘を鳴らす人もいる。
2024年4月23日~29日、イスラエルではペサハ(過越祭)を迎える。ユダヤ教3大祭りの1つで、モーセ率いるイスラエル民族が「出エジプト」したことを記念する重要なお祭りだ。
この機会にイスラエルがさらなる攻撃を受ける可能性はゼロではない。ガザでのハマスとの戦いに加え、「危険な賭け」に出たイスラエルは今後、戦火が拡大するかどうかの岐路に立たされている。
谷内 意咲:ミルトス代表
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