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あのシーバス社も始めた「脱炭素」計画の凄い中身 「500年の歴史誇る」スコッチ業界の新たな挑戦

東洋経済オンライン / 2024年4月27日 14時30分

水源は目の前を流れるネス川で、くみ上げた水の一部は紫外線浄水器で浄化後、ビールとウイスキーの仕込み水、およびホテルの飲料水になる。

主原料のモルト(麦芽)は100%地元産。インヴァネス周辺はスコットランドでも有数の大麦生産地で、大手業者が同市内にモルティング(製麦)工場を構えているため、輸送に伴う炭素排出量も低く抑えることができる。

これら一連の取り組みにより、この酒造所は年間250トンの炭素削減に貢献しているという。

「夢の燃料」に寄せられる期待

スコットランド東部アンガス地方の家族経営農場にある2013年創業のアービキー蒸溜所も、グリーン水素をベースとした脱炭素化を進めている。

グリーン水素とは、再生可能エネルギーで水を電気分解して得られた水素のこと。燃焼しても温室効果ガスは発生せず、水になるだけの水素は、まさに「夢の燃料」だ。

広大な自社農場で栽培したジャガイモやエンドウ、大麦を使ってジン、ウォッカ、ウイスキーを製造しているこの蒸溜所では、発電容量1メガワットの風車1基、電解槽、水素貯蔵タンク、水素ボイラーからなるグリーン水素エネルギーシステムを建設中だ。

水素の生成に必要な水は、屋根から集めた雨水を利用するという。フル稼働すれば、アルコール1リットルの製造につき約4キログラムの二酸化炭素(CO₂)が削減されるという。

「このシステムが実用化すれば、蒸溜所の脱炭素化は一気に加速するでしょう」と、取材に応じた創業者のイアン・スターリング氏は説明する。

ほかにも、水素による脱炭素プロジェクトが進められている蒸溜所には、ピート香の効いたウイスキーで名高いアイラ島のブルックラディ蒸溜所(1881年創業)や、ビームサントリー傘下のアードモア蒸溜所(1898年創業)、グレンギリー蒸溜所(1797年創業)などが挙げられる。

いずれも長い歴史を誇る蒸溜所だが、伝統にあぐらをかくことなく、未来を見据えた取り組みを積極的に推し進めているのが印象的だ。

シーバスリーガルやバランタインも

注目されているもう1つの脱炭素ソリューションは、蒸溜過程で生じる熱を回収・再利用することで省エネとCO₂排出量の大幅な削減を実現する廃熱回収システムだ。

シーバスリーガルやバランタインなどの銘柄で知られ、スコットランドに12カ所の蒸溜所を抱える大手メーカーのシーバス・ブラザーズ社(仏ペルノ・リカール社傘下)は、自己蒸気機械圧縮と熱蒸気再圧縮技術を組み合わせた熱回収システムを導入している。

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