あのシーバス社も始めた「脱炭素」計画の凄い中身 「500年の歴史誇る」スコッチ業界の新たな挑戦
東洋経済オンライン / 2024年4月27日 14時30分
先述のアービキー蒸溜所はこの基金から300万英ポンド(約5.7億円)、ブルックラディ蒸溜所は250万英ポンド(約4.7億円)、ビームサントリーのプロジェクトは294万英ポンド(約5.5億円)の助成金を獲得している。
一方、シーバス・ブラザーズ社の熱回収システムは、スコットランド自治政府の「産業エネルギー変革基金」から資金援助を受けた。
会社の垣根を越え知識や資源を共有
スコッチウイスキー業界の結束力の強さは、知識やリソースの共有にも見て取れる。
シーバス・ブラザーズ社は、グレントファース蒸溜所の熱回収システムの設計と導入からの学びの詳細を無償で公開し、グループ外の蒸溜所にも共有している。
「私たちが持続可能な開発における共通の目標を達成し、私たちの製品と地球の長期的な未来を確かなものにするには、産業全体での協働が肝要です」と語るのは、同社の会長兼CEOのジャン=エティエンヌ・グールグ氏。ネットゼロの達成は、競争ではなく、共走と共創が可能にするのだ。
スコッチウイスキー協会の専門家チームは、それぞれの蒸溜所のニーズや課題に応じたガイダンスを提供するだけでなく、テーマ別ワークショップなどを通じて、会社の垣根を越えた知識や資源の共有と協働を円滑化することで、産業ぐるみの取り組みを支援している。
「収集したデータの分析結果と、これまでの進捗を考慮すると、2040年までに製造工程の完全脱炭素化は、現実的な目標だと考えています」と、ピギン氏は説明する。
一致団結して本気で脱炭素化を進めるスコッチウイスキーに、これまでに増して奥の深い魅力と味わいを感じるのは筆者だけであろうか。
ケリー狩野 智映:フリーランスライター、コピーライター、メディアコーディネーター、翻訳者
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