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あのシーバス社も始めた「脱炭素」計画の凄い中身 「500年の歴史誇る」スコッチ業界の新たな挑戦

東洋経済オンライン / 2024年4月27日 14時30分

2021年に熱回収システムの試験的プロジェクトに選ばれたグレントファース蒸溜所は、スコッチウイスキー最大の産地スペイサイド地方にある1897年創業の蒸溜所で、年間生産量は400万リットル。

ここでは、3基ずつある初溜釜と再溜釜に熱回収システムを装備することで、年間CO₂排出量を8290トンから3970トンに削減することに成功した。残りの排出量は、電化、バイオ燃料、蒸溜副産物を利用したグリーンガスなどで段階的に対処していくという。

この熱回収システムは、今後3年間で同社が所有するほかの蒸溜所にも導入される予定だ。

温室効果ガス排出量が58%低減

上記以外にも、スコッチウイスキー業界には脱炭素化の本格的な取り組み事例が数多くある。いったいなぜ、スコッチウイスキーの製造者たちにはここまでする能力があるのだろうか。

その答えの1つは、業界団体であるスコッチウイスキー協会の結束力と影響力だろう。

大小含めて90社以上の会員を抱える同協会は、スコットランドで業界全体の持続可能な開発目標を打ち立てた、最初の業界団体である。包括的な環境戦略を発表したのは2009年。そしてこの戦略は、かけ声倒れに終わっていない。

同協会が2021年11月に公表したデータによると、2020年におけるスコッチウイスキー産業の温室効果ガス排出量は2008年のレベルから58%低減し、使用電力は40%が再エネに切り替わっている。

この進展を受けて2009年の環境戦略は更新され、現在の産業目標は、2040年までに製造工程を完全脱炭素化し、2045年までにサプライチェーンも含めた産業活動全体でネットゼロを達成という極めて野心的なものだ。

「スコッチウイスキーのように、イギリス経済のみならず、世界で重要な役割を担う産業にとって、持続可能な開発を先導することは当然の責任です」と語るのは、同協会の産業サステナビリティ部長、ルース・ピギン氏。

だが、どのような取り組みも、政府の政策的支援や資金援助なしには実現しがたい。

「脱炭素化の実現に必要な資源と財源を確保するには、個々の組織レベルでは力不足。産業を代表する声として、政府と密接に協働し、働きかけるのは、スコッチウイスキー協会の重要な機能の1つです」とピギン氏。 

イギリス中央政府は2022年、実現可能性が実証された蒸溜所脱炭素プロジェクトに助成金を支給する、総額1000万英ポンド(約19億円)超の「グリーンディスティラリーズ・コンペティション基金」を開設したが、これはこの「声」がいかに重視されているかの証しだ。

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