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宇宙のどこかに人間みたいな生命体がいる必然 宇宙物理学者・佐藤勝彦×生物学者・福岡伸一

東洋経済オンライン / 2024年4月29日 16時30分

福岡 じつは、こんな思考実験があるんです。

私たちのいるこの宇宙の歴史はおよそ138億年、そのうち地球の歴史は46億年、さらに、地球に生命が誕生してから38億年がたったといわれます。つまり、生命は、地球誕生の8億年後に生まれたことになる。

では、その8億年の歴史が、さまざまな環境条件を含めてまったく同じように再現され、繰り返されたとき、同じ進化のプロセスをたどって、いまと同じ人間が生まれてくるだろうか。

私は、生まれてこないと思うのですが。

佐藤 私も、生まれないと思いますね。よく、いまから6550万年前に地球に巨大隕石が落ち、それによって恐竜が滅んだために、哺乳類が知的生物へと進化したといわれますよね。

しかし、あの時期にあの隕石が落ちたのは、極めて偶然です。隕石が落ちず、人間の代わりに恐竜が知的生物になった可能性すらあると思います。

福岡 私は、同じ環境が再現されれば同じ結果がもたらされるというのは、イデアを求めすぎる考え方ではないかと思うんです。

同じ条件で隕石が落ちても、一部の恐竜は生き残ったかもしれないし、その後に残った哺乳類もいまのように栄えなかったかもしれない。

進化の過程にはさまざまな岐路が存在し、そのうちどれを選ぶかの選択には、偶然としか思えないことがたくさんあります。

たとえば、私たちの体をつくるアミノ酸にはL体とD体という2つの異性体があって、地球の生物はすべてL体を使っています。

そこに必然はなく、たまたま最初に誕生した生命がL体を選んだに過ぎない。同じ環境が繰り返されれば、次はD体が選ばれるかもしれません。

そう考えると、同一の進化のプロセスは二度と繰り返されないと思えます。

とくに西洋には、環境さえ再現されれば必ず人間が地球を支配するというある種のドグマ(独特の教義や教理)がありますけど、それはちょっと違うと思うんです。

佐藤 そうですね。ただ、私自身は、知的生命体についてはもう少し別の見方ができると思っています。

確かに進化の過程でたくさんのサイコロが振られることを思えば、2、3回の実験でいまと同じ人間が生まれてくるとは考えにくい。しかし、地球のような星が他に無数にあるとするなら、どこかで人間のような知的生命体が生まれることは、統計的に必然です。

つまり、いま恐竜が知的生命体になったかもしれないと申し上げましたけど、ありとあらゆる場所にありとあらゆる生物が生まれ得るなら、そこには何らかの形で必ず知的生命体が含まれるはずです。

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