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プロジェクトに失敗する人と成功する人の決定差 世界に誇る建築家の功績は「なぜ」から生まれた

東洋経済オンライン / 2024年5月1日 16時30分

しかしその可能性が現実にどれだけあるというのか? 改築が世界に衝撃を与え、世界中から観光客を呼び寄せたことが過去にあっただろうか? そんな例は思いつかない。だが、すばらしいロケーションに新しく建てられた斬新な建物なら、世界の熱い注目を集められるし、実際に集めている。シドニー・オペラハウスのように、膨大な観光客を引きつけている実例がある。

大変な挑戦であることに変わりはないが、それでもバスク州の望みを実現できる可能性は高いと、ゲーリーは論じた。

「達成したいこと」を最後まで見失わない

そうして完成した建物は、建築の批評家や一般人からも一様に絶賛され、グッゲンハイム・ビルバオは一躍世界の脚光を浴びた。観光客はビルバオに押し寄せ、お金を落としていった。開館後の3年間で、かつてスペインの知られざる辺境だったビルバオに400万近くもの観光客が詰めかけ、経済効果は10億ドル(2021年の金額)に達した。

グッゲンハイム・ビルバオが、フランク・ゲーリーの想像力と才能、そしてプライドによって生み出されたのは間違いない。だがこの建物の原型を形づくったのは、プロジェクトの「目的」だった。

ゲーリーの実績を見ればわかるように、彼はもっとささやかで地味な建物を設計することもできた。実際、ビルバオの数年後にも、フィラデルフィアの小規模な美術館の改築を手がけている。

だがビルバオのクライアントは壮大な目的を持っていた。だから、それを最善の方法で実現するために、ゲーリーは美術館を今ある場所に、今あるかたちでつくったのだ。

プロジェクトは、それ自体が目的であることはなく、目的を達成する手段に過ぎない。高層ビルの建設や、会議の開催、製品の開発、本の執筆等々は、それ自体を目的として行われるのではない。ほかの目的を達成するために行われる。

これは単純で当たり前のことだ。だが、「見たものがすべて」の錯誤に陥り、明白で議論の余地のなさそうな結論に飛びつくとき、私たちはこのことをいとも簡単に忘れてしまう。

「答え」から始めるとアイデアは生まれない

プロジェクトを始めるときには、手段と目的のもつれをほどいて、「自分は何を達成したいのか?」をじっくり考え、心理メカニズムのせいで性急な結論に飛びつきたくなる衝動に、なんとかしてストップをかけなくてはならない。フランク・ゲーリーの、「なぜこのプロジェクトを行うのですか?」の問いかけが、そのカギを握る。

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