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「ぬいぐるみと暮らす大人たち」の少し意外な本音 「ぬいぐるみ病院」を訪れる人々が大切にするもの

東洋経済オンライン / 2024年5月4日 12時50分

この本は、性別が偏らないように、というところは意識して描きました。「ひとりじゃないよ、仲間はたくさんいるよ」ということを、描けたらとてもいいのかなと。

堀口:私も、思ったよりは(男性が病院に)いらっしゃるな、という感覚がありました。ぬいぐるみ好きの方って「優しげで引っ込み思案な方」といったイメージがあると思うんですが、実はキャリアウーマンとか芸能界の方とか、デザイナーさん、芸術家の方など、外で活躍されている活発な方がけっこう多いんです。

男性も競争社会で気を張っている方は多いのだと思います。本当はすごく繊細で、でも外ではそういう面を見せずに頑張っていらっしゃる方が、ぬいぐるみと暮らすことでバランスをとっているのかもしれません。自然体の自分でいられる時間をつくっていらっしゃるのかなと。

――実際に治療を申し込んで来られる方のうち、男性の割合ってどれくらいでしょう?

堀口:お申込みは奥さまなど女性のお名前を書かれていたりするので、正確にはいえないのですが、感覚的には2~3割はいらっしゃるかなと思っています。

以前、お子さん連れのご夫婦が来院されて。お父さんは最初「そんな、ぬいぐるみなんか入院させて」とクールな感じだったんですが、皮膚移植(新しい布を使用する治療法)の話をしていたら、「それはちょっと色が違うんじゃないか?」って、だんだん熱心になられて。そうしたら奥さまが、「パパが一番○ちゃん(ぬいぐるみの名前)にハマってたもんね」と暴露なさった、なんていうこともありました(笑)。

ぬいぐるみへの思いが、より強く濃くなる理由

――「誰かの不在」を感じるエピソードも多かった印象です。ぬいぐるみが、そういったご家族たちを支えているんですね。

こやま:取材はかなわなかったのですが、いただいた資料のなかには、亡くなったお父さんや、お子さんのエピソードもありました。悲しみは消えないんだけれど、でもそのぬいぐるみの存在が心を癒やしてくれている、という事実にすごく気持ちが動かされて。そこは描けたらいいなと思いました。

堀口:亡くされた奥さまの「分身」として(ぬいぐるみに)接している旦那さまが来院されたこともあります。いっしょに旅行に行かれたりして、心のよりどころにされている。どうしようもないつらさ、悲しみを受け止める存在なんですね。

もうぎりぎり、あと糸一本のようなところで生きている方が、ぬいぐるみさんの存在を頼りに、自分のなかに「生きる意味」を見いだそうとしている。そこに、たくましさのようなものを感じることもあります。

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