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「保存樹木だったケヤキ」はなぜ伐採されたのか 1本の大木が問いかける街づくりに欠けた視点

東洋経済オンライン / 2024年5月4日 12時30分

一方、保存樹木が枯れたり、土地を売ることになるなど、伐採しなければならない事情が生じたときは、所有者が指定を解除するために「伐採等届」を提出する。「届出」とはいわば、自治体側が受理すれば自動的にその効力が発生するもので、行政に検討・判断の余地はない。

世田谷区の場合、所有者から指定解除の事前相談の際に、同じ場所、あるいは、移植など残す余地がないか所有者に検討をお願いしているという。ただ、移植に対する区助成金50万円支給はあるが、「大木の場合それではまったく賄えない。大木の移植は、高額なことに加え、移植先の場所の有無や、移植時期が限定されたり、そもそも樹木の種類によっては移植が難しい」(世田谷区みどり政策課の黒岩さや香課長)ため、移植作業も容易ではない。

現在、世田谷区における保存樹木は1662本。2011年〜2020年まで1800本台で推移してきたが、ここへきて指定解除が指定を上回っていることで減少が続いている。背景には「老木化や土地活用の変化が増えてきている」(黒岩課長)ことがあると見られる。

今後さらに減っていくことが見込まれるが、保存樹木1本のために住民の声を拾うのは難しというのがスタンスだ。

「今の制度設計の中では、所有者の理解があってこその保存樹木。そこまで大きくなるまで世話をして、切らなかったから残ったという側面が大きい。なので、樹木に対しての制限につながるようなことができるか、と言えばそれには課題が多い。制限を設けすぎると、逆に木を育てたり、指定することを避ける人が出てくるという懸念もあります」(黒岩課長)

「声を上げなければ、好きなようにされてしまう」

とはいうものの、自治体側の事情をよく知らない飯田さんにとって、突然の指定解除のショックは大きい。

「“元・保存樹木”って何? そもそも保存樹木の登録ってそんな簡単に解除できるの? と、最初に聞いたときにはびっくりしましたね。所有者やマンション事業者が伐採しなければならない事情はわかるのですが、保存樹木を維持管理する予算も区民の税金で賄われているはずですから、住民に説明もなく登録解除するというのもどうなんだろう……とモヤモヤばかり残りました」(飯田さん)

これまで何かに対して抗議などしたことはない。だが、マンション開発を手掛けるオープンハウスなどに「周知されていないのはおかしい」と疑問を投げかけ、伐採の取りやめを要請した。

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