「保存樹木だったケヤキ」はなぜ伐採されたのか 1本の大木が問いかける街づくりに欠けた視点
東洋経済オンライン / 2024年5月4日 12時30分
ニューヨークの事例では、住民が合意形成に関与できる仕組みはあるが、その前提となるのはまちに誇りを持つ市民の「思い」だ。せっかくアクセスの権利とルートがあっても、住民が声を上げなければ状況は変わらない。
「行政はあくまで住民の生活を助ける主体であり、行政が主役ではありません。その行政を動かし、保存樹木の指定や指定解除に対して住民参画の仕組みをつくるためにも、まずは住民の側が声を上げる必要があります」(窪田教授)
まちづくりにおける「文化」の醸成が重要に
窪田教授がそのカギに挙げるのは、まちづくりにおける「文化」の醸成だ。「自分たちの地域の住環境は自分たちで守っていこう、という文化を、その地域の中で育んでいくことが重要です」(窪田教授)。
4月26日、大ケヤキの木はマンション事業者によって“計画どおり”伐採され、姿を消した。今回の問題を提起した飯田さんは今、大きな喪失感を抱えている。
「正直にいうと、自治体や開発事業者から面倒くさがられているだろうな、と思うこともあります。でも、私が声を上げなければ、あの場所に確かにあったケヤキの木が本当になかったことにされ、人々の記憶からも消えてしまう。これ以上同じことを繰り返さないためにも、私なりに発信する活動を続けていきたいと思います」(飯田さん)
日本では今後、空き家や相続問題、土地や建物の老朽化などもあり、各地で大小さまざまな開発が行われるだろう。多くは所有者や開発者の意向にそうことは「仕方ない」のかもしれないが、住民側も自らが住む地域に主体的に関わる意識を持つ必要があるのではないだろうか。
堀尾 大悟:ライター
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