江東区で記者が目撃した選挙妨害騒ぎの阿鼻叫喚 江戸情緒残る下町はそのとき地獄絵図と化した
東洋経済オンライン / 2024年5月6日 8時40分
その瞬間を記者は見ていなかったが、聴衆の1人が根本氏に手を出したようだった。中年くらいの男性が、体を押さえようとする黒川氏らともみ合っていた。この男性が実際に、日本保守党の支援者であったかどうかはわからない。
「暴力でしか訴えることのできない境界知能のバカどもの信者。これが日本保守党の正体でございまーす。江東区民の皆さん、よーく見てください」と、勝ち誇ったような根本氏の声が響き渡る。
聴衆から抗議の声が上がると、根本氏は挑発を重ねた。「お前も私人逮捕だからな、クソオヤジ。こっちこいよ、てめえ。もっと罪重ねてごらん。牢屋ぶち込んでやるよ」「IQ80以下の境界知能が。おめえらみてえなバカが日本の政治をダメにしてんだよ。もっと勉強しろ、おめえらよぉ!」。暴言は続く。
「なぜ取り締まらない」警察に訴える飯山陣営
しばらく時間が経つと、サイレン音が響き渡り、5台のパトカーが駆けつけた。現れた警察官たちが事情を尋ねる。黒川氏らに取り押さえられていた男性が最終的にどうなったか、記者は確認できなかった。
「これがありなんだったら、何でもありじゃないですか。やったもん勝ち!」「なんで取り締まらないの!これだけ警察がいるのに!」。飯山氏陣営の男性が、駆けつけた警官らに必死の形相で訴える姿が目に入る。警官側は、静かに耳を傾けているだけだった。
子どもが泣き叫ぶ声が聞こえ、現場が騒然となる中、ついに日本保守党陣営が聴衆に呼びかけた。「人が集まっていたら連中の思うツボですので、すみやかに解散してください」。呼びかけに応じるかたちで、集まっていた聴衆たちは三三五五と少しずつ散らばっていった。
「じゃ、帰りまーす」。聴衆が引き上げたからか、つばさの党陣営も街宣車に乗り込み、去っていった。その後、事務所脇には路傍を塞ぐように重厚な機動隊のバスが停車した。
記者の傍らにいた地元民とみられる男性がつぶやいた。「ずっと、この繰り返し。全然話が聞けねえよ。いい加減にしてほしい」。
記者が目撃した、約50分にわたる突然の他陣営への乱入。今回は飯山氏が演説中などではなかったため、直接的な「選挙妨害」には当たらないかもしれない。ただ、陣営が大混乱し、予定していた選挙活動に支障が出た可能性は高いだろう。
飯山氏の事務所にはこんな貼り紙もあった。「今のところ決まった場所、時間での公開街宣はありません」。乱入行為を恐れて候補者が自身の活動をアピールできなかったのであれば、純粋に候補者の主張を聞きたいと思う有権者の機会が奪われたともいえる。
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