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アップルやアマゾンでも「失敗する」共通の特徴 プロジェクト自体は最終目的ではなく達成する手段

東洋経済オンライン / 2024年5月7日 18時0分

アマゾンで新しいプロジェクトを売り込もうとする人は、まず短いPRとFAQを書く。PRの最初の数行で、プロジェクトの目的を打ち出さなくてはならない。その後行われるすべての作業は、このPRとFAQを起点として、逆から進められる(ワーキング・バックワーズ)。そして重要なことに、どちらの文書もわかりやすい言葉で書かなくてはならない。

「僕は『オプラ語り』と呼んでいたよ」と元アマゾン幹部で、ベゾスのために何度もPR/FAQを書いた、イアン・マカリスターが教えてくれた。「ほら、オプラ・ウィンフリー(テレビ番組の司会者)は、ゲストが何かをしゃべると、観客のほうを向いて、誰にでもわかる簡単な言葉で言い直してくれるだろう?」

平易な言葉を使うと、専門用語やスローガン、技術用語によって、欠陥を覆い隠せなくなる。思考がむき出しになる。曖昧な考えや、生煮えの考え、非論理的な考え、根拠のない考えがあぶり出される。

最初から全員の足並みがそろう

プロジェクトの売り込みは、経営陣との1時間の会議で行われる。アマゾンの会議ではパワーポイントのプレゼンテーションや、その他ビジネス界の一般的なツールが禁止されているから、PR/FAQを紙で配布し、最初に全員がそれをじっくり黙読する。それから最初の感想を出し合う。このとき、早いうちから他人の考えに影響を受けてしまわないように、立場が下の人から順に発表する。

続いて、提案者が資料を1行ずつ説明し、意見がある人は自由に発言する。「この細部に関する議論の段階が、会議の最も重要な部分だ」と、元アマゾン幹部のコリン・ブライアーとビル・カーは書いている。「厳しい質問が飛び交う。主要なアイデアと、それらを表現する方法をめぐって、丁々発止の議論がくり広げられる」

会議が終わると、提案者は出された意見を踏まえてPR/FAQを書き直し、それを再度経営陣に発表する。このときも同じプロセスがくり返される。次も。そのまた次も。何度も試行錯誤をくり返すうちに、提案はあらゆる面にわたって検証、強化されていく。また、これは関係者が最初から深く関与する参加型のプロセスなので、最終的に完成したコンセプトは、提案者からCEOまでの全員によって等しく明快に理解されている。最初から全員の足並みがそろうというわけだ。

とはいえ、どんなプロセスも完全無欠ではない。あるときジェフ・ベゾスは、「ジェスチャー操作に対応する3D機能搭載のスマートフォン」というアイデアを思いつき、これに惚れ込んだ。そしてみずからPR/FAQを共同執筆して、「アマゾン・ファイアフォン」のプロジェクトを立ち上げた。

「クールなアイデア」は無料でもいらない

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